多摩ぐるぐる

東京都下『多摩地域』を中心に「食べ歩き(ランチ&ディナー)」「ドライブ」「旅行」「日々のあれこれ」を綴るブログ。

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小机邸喫茶室『安居』@武蔵五日市駅〜西多摩の文明開化の息吹を感じて


あきる野市三内小机家は、江戸時代に山林業で財を成し、明治期に入ってからは五日市線の開業に尽力するなど、地域の発展に尽力してきた旧家。

明治初期に建てられた和洋折衷式の母屋の一角が、週末には喫茶室として開放されていると聞いたので立ち寄って見ました。
小机邸喫茶室「安居」(あんご)さんです。

あいにく屋根の葺き替え工事中のようでしたが、喫茶室は営業しているようで一安心。

小机邸があるのは、JR五日市線の武蔵五日市駅から秋川街道を青梅方面に進むこと約700mの所。
五日市線の線路の下をくぐり、さらに坂道を登って、最初の信号を左手に入ってすぐのところに間口の広い入り口があります。
きちんと区割りされた駐車場はないのですが、門扉前のこのプロック舗装のスペースに2〜3台は停められます。

小机邸は東京都有形文化財に指定されていて、昨秋に伺った際にはちょうど東京都の文化財ウィークの最中だったようです。

門の中に進んでいくと、まず目につくのが趣味の良いロッジ風の建物。
こちらも文化財になっても良さそうなくらい風情のある建物です。
かつては事務所的な使い方をしていたもので、今は専らご当主の趣味のスペースになっているそうです。

その奥あるのが、文化財に指定されている「小机家住宅」

明治初期の文明開化の頃、大火が出て焼け野原となった銀座の街を、政府は火災に強い西洋風煉瓦造りの街並みで再生します。
なんでも当時のご当主は、その煉瓦街で見た洋風建築に感銘を受け、早速同じように洋風列柱廊やバルコニーのある建物を作って自宅としたんだそうです。
極め付けのハイカラさんだったんですね。

ただ、建てられたのが明治8年くらいだったので、当然まだ本物の西洋建築を建てられる職人がいたわけでもなく、外観は真似できても技術的には木造の骨組みに漆喰壁という日本の土蔵造り。
それでも一般の日本の木造建築と比べると、耐火性能も優れていたはずです。

中に入ると一階部分はほぼ和風建築で、壁に鏝(こて)絵が描かれています。
鏝絵の図柄は「波と兎」
江戸自体に流行した日本的な文様です。
は水ですから、火除けのお守りを意味します。
大火の後にできた銀座の街並みに感銘を受けて作った建物ですから、火除けを願った鏝絵を掲げるのはごく自然なことでしょう。

は月の精として、子孫繁栄や豊穣、不老長寿を願ってのもの。
そうすると、真ん中の丸窓はを模していますね。
薄暗くなってから裏側から明かりを灯すと、丸窓が黄色く浮かび上がって月のように見える、という意匠でしょう。
素晴らしく洒落たデザインだと思います!
鏝絵の下の金網部分では、昔は鳥を飼っていたとのこと。
「波と兎」のデザインに、本物の「鳥」を組み合わる意図はよくわかりませんが??
当時のご当主が趣味で、鳴き声の良い鳥でも飼いたかったのかな?
来客者が見れば意外性を感じて楽しいでしょうから、遊び心だったのでしょうね。

一階の畳敷きの広間は、商家の事務室的な設え。
デザインの良い扉には、昔ながらの表面が波打っているガラスがはめ込まれていて味があります。

二階に上がる階段は螺旋階段。
木造なのに手摺りまで弧を描いています(!)
これ、木材をこんな形に加工するのは大変だったはずですよ。
細工も凝っていますし、さすがに山林業で材を成した家は違いますねぇ。

2階は寝室として利用していた板張りの床の洋間。
今はイベントスペースとして、時折ミニライブなどを開催しているようです。

さて、一階の奥の喫茶室へ進みます。
元は家族の居間として使っていたプライベートなスペースで、テーブルが二つ並べられた洋間と畳の敷かれた和室、それにキッチンがあるようです。
左手の奥がキッチン。
いわゆるLDKの走りですね。

昔は薪をくべていたであろう暖炉もあって、上流家庭の香りが漂います。

暖炉まで作ってライフスタイルは洋風になっても、畳の部屋は無くしたくない・・・。
なんだか昭和の別荘建築でも見ているようで懐かしさを感じますが、明治初期の建物としては寧ろ新しすぎるくらい。
ひょっとしたら、途中で一度改装しているかもしれませんね。
メニューは、飲み物が抹茶、紅茶、コーヒー、ジュース。ケーキがチーズケーキのベイクドとレアの2種類。
この時はレアチーズは品切れでした。
品数は多くはないのですが、元々は現御当主の奥様が建物を見学にきた人にお茶を出す機会が多かったので、いっそ喫茶室にしてみようと始めたもの。
ゆっくり寛いで一休みしていってくださいとのご好意からきていますので、くれぐれも「軽食はないのか?」なんて無理な注文をするのはやめてください(笑)

妻殿が注文したのは、「岡山県高梁産 紅茶」(600円)「ベイクドチーズケーキ」(500円)
ティーカップを見ると、なんと双剣マークの高級磁器マイセンのものでした(!)
上品・可憐な絵付けに波型のレリーフで、さすがに高級感があります。
喫茶室のために新たに買い揃えるようなカップではないので、自宅用に使用していたものなのでしょう。
紅茶は国産のものがあるってのは知りませんでした。
発酵のさせるかどうかの違いがあるだけでお茶には違いありませんから、国産の紅茶があっても不思議ではないですね。
苦味がツンケンすることのない、優しく穏やかな味の紅茶でした。
・・・優雅です。

自家製のベイクドチーズケーキもお上手に焼き上げられています。
甘くてフレッシユな果物が三種類も添えられていました。

私の方は、ベイクドチーズケーキにコーヒー。
こちらのカップは国産のナルミかノリタケだと思いましたが、お行儀が悪いのでソーサーをひっくり返して確認するのはやめておきました(笑)

秋川街道沿いにあるのですが、大きな看板もなく入り口は目立ちません。
敷地内には今もご家族がお住いの個人所有の住宅で、営業時間も限られています。
でも明治初期の進取の気性とハイカラ趣味に富んだ、多摩の文明開化の息吹を感じることができる建物です。
JR五日市駅から歩いても来れますので、古民家や建築物が好きで、静かに鑑賞したいような方にオススメしたい喫茶室です。
途中、横道に入ったところにある初後亭さんで蕎麦か饂飩を食べて、安居さんでお茶して帰るなんてルートが素敵かもしれません。


『小机亭喫茶室 安居』(こづくえていきっさしつ あんご)

■所在地  あきる野市三内490
■営業時間 金・土・日・月・祝の11:00~17:30
■駐車場  門の外に2〜3台



小机邸喫茶室 安居カフェ / 武蔵五日市駅

昼総合点★★★☆☆ 3.5

 

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