多摩ぐるぐる

東京都下『多摩地域』を中心に「食べ歩き(ランチ&ディナー)」「ドライブ」「旅行」「日々のあれこれ」を綴るブログ。

旧白洲邸『武相荘』@町田市〜 白洲次郎のカレーライス

白洲次郎という男をご存知でしょうか。
敗戦後、吉田茂首相の懐刀として占領軍GHQとの折衝を担当、新憲法制定や
サンフランシスコ講和条約の締結にも深く関与した実業家です。

出身は兵庫の士族で、父親は神戸の貿易商。
イギリスに留学しケンブリッジ大学を卒業後、帰国して華族のお嬢さんと結婚。
寄宿学校仕込みの流暢なクイーンズ・イングリッシュを話し、プリンシプル
(=あるべき原理原則)に合わないことには、たとえ戦勝国相手であってもテコでも
譲らなかったことから、GHQの要人に「従順ならざる唯一の日本人」と言わしめ
たとか。
米軍の将校に、「英語が(日本人のくせに)上手いな」と褒められた(?)時には、
「あなたももう少し勉強すれば、英語を上手く話せるようになる(米訛りではない
綺麗な英語で紳士的に話せる)」と言い返したとか、天皇陛下からの贈答品を
マッカーサーが「その辺に置いていけ」と言ってぞんざいに扱おうとしたことに
激怒し、そのまま持って帰ろうとして慌てさせたとか、講和会議後のスピーチを
外務官僚が米国に謙った英文で用意したことにも激怒し、急遽日本語で用意し
直したとか・・・いくつかの痛快な伝説的逸話が残されています。

もっともこれは、敗者の側の人間がこうして突っ張らかったから痛快なのであって
立場の上の人間にやられたら、下のものは大変不愉快でしょうけどね(笑)

そんな格好良さや、オイリーボーイと呼ばれる程の大の車好きであったこと、
また鶴川村(現町田市)に転居して農作業に没頭してみたり、日曜大工が趣味であった
りした生き方に共感や憧れをもつ人、要はファンが多くいる人物です。
NHKのドラマになったりもしましたね。


そんな白洲夫妻が暮らした住居が今も町田市内に残っていて、小さなミュージアムや
レストランとして一般に公開されています。

レストランでは、次郎氏の愛した当時のレシピのままのカレーや親子丼を食べることが
できると聞いたので出かけてみることにしました。
旧白州邸 『武相荘』さんです。
州(東京埼玉)と州(神奈川)の境にあるから武相荘(ぶあいそう)。
ネーミングにも、さすが洒落が効いています(笑)


🌀アクセス

武相荘の所在地は、町田能ヶ谷7丁目
最寄駅は、小田急線小田原線の鶴川駅で北口から徒歩15分ほど。
駐車場は専用のものが16台分用意されています。
ただ、これだけ駐車場があっても行楽期には空き待ちの列ができることがあるとか。
さすが白洲次郎、人気あります。

また、駐車場へは鶴川街道側からはアクセスできず、一本西側の住宅団地内の路地
から入ることになるので、事前に地図を確認しておくのが吉でしょう。
この日は小雨混じりの天気だったせいか、比較的空いていて楽に駐車できました。


🌀外観と店内の様子

旧白子邸は、戦前の農家を買い取ってリフォームした家で敷地は広大。
駐車場からは所々に花木の植えられた、こんな雑木林や竹林の間の小径を進みます。
入り口のこの小径を歩いただけで、ちょっとシビれます。
僅かに美意識を添えた日本の里山の風景。

右手の小さな谷戸には井戸水が湧き出ていて、ここが耕作地だったのかな?帰国後、日米開戦不可避と感じた白洲は「勝ち目の見えない不合理な戦争だ」として
反戦の立場をとり、ここ旧鶴川村に引きこもって農家への転向を試みたそうです。
欧米との国力の差を実感していた白洲としては、闇雲に平和主義者として開戦に反対
したのではなく、「合理的ではないから反対」であったようです。

小径が突き当たり、左手の階段を上がると本宅が見えてきました。
豪奢過ぎもせず、みすぼらしくもなく、隠棲するにはイイ感じの日本家屋。

手前の元納屋らしき建物はガレージになっていて、イギリスの古い高級車が鎮座。
男の(一部の?)憧れガレージライフ!

最晩年はポルシェ911に乗っていたそうですが、トヨタに「こんな車を作れ」と
言って寄付しちゃったとか。
イヤイヤ、カッコ良すぎでしょう(笑)
その後、完成したのが2代目のソアラなんだとか。

門を潜ってすぐの建物が「レストラン&カフェ棟」になってます。

ここまでは入場料なしで入って来れます。
混んでなければ良いなぁと心配しながら引き戸を開けると、幸いまだ空席あり。
天候が悪かったせいか、コロナで客足が鈍いせいか?とにかくラッキーでした。
席にはダークスーツにネクタイでビシッとキメたスタッフが案内してくれました。
店内には、テーブル席が二人用と四人用のものが合わせて8つくらい。
廊下に出た奥の間にも3テーブルほど置いてありました。
そんなに大きな建物ではありません。

元は二階建ての作業場だったのかな?
天井が高く、太い梁や柱が見えていて、改装古民家らしい洒落た空間になっています。
客層としては、中高年の男性のお一人様や夫婦連れが多かったです。
えっ、なにっ?、あんたらも白洲次郎のファンなの??って感じで、何か微笑ましい(笑)
みなさん御行儀良く静かに会話しながら食事をしているので、居心地は良好です。
そう言えば、駐車場にも高級スポーツカーが数台停ってたなぁ。


🌀メニューと料理

ランチのメニューは、白洲家レシピとカレー(海老orチキン)、白洲次郎の好物で
あった親子丼、それにオムライスタイガパオライス

カレーは、伯爵家の令嬢だった妻の正子さんが、伯父がシンガポールに出張した
折りに現地で食べて気に入り、レシピを聞いてきたものを元に作った味だそうで、
二郎も食べた白洲家の定番の味だそうです。

そう聞くと親子丼の方も気になりますが、シンガポールのコック直伝、白洲家の
カレーをまずは味わってみたくなります。
そんな訳で、私が注文したのは、「武相荘海老カレー」(1,600円)
ルーはポットに入れられ、金属皿にはライスと千切りキャベツにミニトマト。
ピクルスの小皿も付いています。
それに素朴な味の野菜たっぷりスープ。

カレーは、じっくり煮込まれてドロドロしたルーの中に、スパイスの粒が散っている
のが見えて美味しそう。
スプーンですくってみると、大きめの海老が贅沢にゴロゴロと出てきましたよ。
お値段高めなカレーではありますが、この海老のボリュームを見て、海老好きな私と
しては納得。

千切りキャペツには味がついておらず、カレーに混ぜ込んで食べるんだそうです。
これは野菜嫌いな次郎が、この様にカレーに添えたキャベツは残さずに食べたから。
良い悪いではなく、それが白洲家流の食べ方なんです。
スープやピクルスなどに野菜がタッブリなところは、農業を志したことがある白洲家
らしさなんでしょうか。
さて、お味の方は、ピリッとスパイスがきいたルーに、大好きな海老がゴロゴロして
いるんですから、キャペツを混ぜ込むと味が若干薄れてはしまうものの、私は美味し
くいただくことが出来ました。

昭和前半のまだカレールーなんてものがスーパーに並んでいなかった時代に、白洲家
ではこんな、当時としては洒落た料理を作っていたのかと知れて感慨深い。
一方、現在この値段を出すなら、もっと多彩なスパイスや具材を組み合わせて、
旨味の深いカレーを食べさせる店が、多分いくつもあるでしょう。
ですから、白洲次郎の生活を垣間見る、或いは町田の一角に残された里山の古民家で、
ゆったりと食事をとることに付加価値があると思う人には、満足してもらえるものか
と思います。

妻殿が注文したのは、こちらの「チキンカレー」(1,300円)

こっちのチキンの方がルーとの相性も良さそうだし、ひょっとしたら普段の白洲家の
味だったのかもしれません。ただ、私は海老が好きなんです。

食事とセットだと、珈琲・紅茶が300円で飲めるそうなので、喜んで追加しました。折角、雰囲気の良い古民家カフェにいるんだから、珈琲くらいゆっくり飲まないと
勿体ないですから。


食後は、ミュージアムになっている茅葺き屋根の母屋の方へ。
白洲一家が暮らしていたのは、この建物です。
間仕切りの少ない農家を買い取って、好きにリフォームしながら暮らしていました。
こちらは入館料が1,100円必要で、小学生以下は入場できず館内写真撮影は禁止。
有名な「葬式無要 戒名不要」の遺書や、正子さんの集めた骨董食器などが展示され
ています。
白洲次郎氏は、スーツや帽子などいつも一流のものを身につけていたそうですが、
ステッキも最高級材のスネークウッドのものが置かれていました。
ヤッパリさすがです。

ミュージアムの奥は、散策できる園路が廻らせた雑木林。
季節感があって、散策に適した良いお庭です。
どこかの別荘地にでもいるかのよう。

茅葺き屋根の母屋もそうですが、これだけ広い敷地を綺麗に保っていくのは、
金銭的に他人事ながら大変だろうなと心配になります。
レストランとミュージアムの収入で足りるのかしらん?

このあたりの景色は、正子さんの趣味かな。
一頻り散歩しての帰りがけ、レストランの手前の建物も展示スペースになっている
ことに気づきました。
階段を上がってみると、二階にバーカウンターがありました。交際範囲も広かったようですから、仲間とここで飲んでいたのでしょう。
ただし、「GENTLEMAN ONLY」
カッコイイ!(喜)
実際の白洲次郎については、一次資料とされるものがほとんど残っていないそうです。
(本人も「墓場に持っていく」と言って、死ぬ前に資料を焼却していたとのこと)
数々の逸話についても、どこまでが真実だったのか定かではありません。
だから各々、好きに解釈して、勝手に憧れる余地があるってことなのでしょう。

私は正子さんの「しょせん平和な世の中に通用する人間ではなかった」なんて評価が
気に入ってますけど。
突っ張って生きていたって、かみさんからみたらそんなもの(笑)

ここ、旧白洲邸 武相荘は、白洲次郎と正子夫妻の生き様や美意識を垣間見る小さな
テーマパークで、レストランもその中の一部。
訪れる価値があるかどうかは、その人次第でしょう。
私はあともう一回は来てみたいですね、まだ親子丼食べてないですから。


【旧白洲邸 武相荘】(きゅうしらすてい ぶあいそう)
■所在地   東京都町田市能ヶ谷7丁目3番2号
■営業時間  11:00-16:30  (ディナーは要予約18:00-20:00)
■定休日   月曜日
■最寄駅   小田急小田原線 鶴川駅
■駐車場   有り



 

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