かいせき井中居@青梅〜旬と彩りの山里懐石
7月と言えば、食べたくなるのは鮎。
しかし、今年はこの暑さでバテているうちに、7月も半ばを過ぎてしまいました。
こなすべき野暮用も溜まっていて遠出もしずらかったのですが、このまま何もせずに7月が終わってしまうのも、それはそれでストレスになります。
そこで、比較的近場にサッと行く位なら良かろうと、一度行ってみたかった西多摩の懐石店に予約を入れました。
青梅市内にある『かいせき・しつらえ 井中居 (いちゅうきょ)』さんです。
場所は、青梅市藤橋。
青梅市と入間市を結ぶ富岡街道の旧道沿いにあります。
最寄り駅はJR青梅線の河辺駅か小作駅になりますが、歩くと3km程ありますので、駅からはバスかタクシーを使うことになります。
車なら、街道沿いのお店を囲む黒塀の西端から細い路地を入り・・・
店の裏手に回り込むと、広い駐車場があります。
酒は飲めなくなりますが、車で来るのが楽な立地です。
憧れのスポーツカーも停まっていますね。
日本家屋の庭らしい、美しい情景。
門から入ったばかりなのに、もう魅せられた気分。
せせらぎが流れ、楓や百日紅等の落葉樹が植えられた、趣の異なる庭が続きます。
里山の風景を一部切り取ったような、素朴なデザイン。
秋の紅葉の時季には、彩りが増して、さらに綺麗になるのでしょうね。
やがて母屋が見えてきました。
格子の目隠しが特徴的な日本の古民家。
庭の雰囲気とマッチしていて、落ち着きがありますね。
玄関を上がると、板敷きのギャラリースペース。
目に入るのは、良く磨かれた床、太い柱、格子戸、民芸調の調度品。
どちらにカメラを向けても、絵になります。
使われている食器類は、ここで購入することができます。
蓮の花の飾り方が、大胆でゴージャス。
籐の椅子が置かれた、ちょっとした休憩スペース。
こちらは、シダの植えられた坪庭側。
屏風の飾られた畳敷きのスペース。
特に希望して予約すると、この奥の和室での食事も可能なようです。
私たちの席は、二階に用意されているようです。
作務衣姿の女性スタッフに案内されて階段を上がると、柱に季節の草花が活けてあったりして。
センスがあって、いちいち美しい。
お店側の「準備万端・歓迎ウェルカムだよ」的な雰囲気が、訪問する側の気分を良くさせてくれます。
まったくもって、お見事。
二階には、板敷きの床にテーブルの置かれた小部屋が何部屋かあります。
こちらは6人用。
今回は二人で伺ったので、残念ながら個室貸切とはなりませんが、
ブラインドで仕切られた、4人用席と2人用席のある部屋に案内されました。
うるさくもなく、狭苦しくもなく、格子窓からは庭の緑が見える席でした。
懐石メニューは、昼食のみ提供の「笹」4,200円から「井中居」13,650円までの5種類。
まぁ、記念日でもありませんし、ランチで大食いもできないので「笹」を予約してありました。
季節の食材を味わってもらうことを信条に、メニューは月替わりとのこと。
上の写真は、7月(文月)の献立。
お目当ての、「鮎の塩焼き」も入っています。
まずは「柚子昆布茶」。
この組み合わせは、初めてですね。
続いて、前菜。
大皿に人数分に小分けした小鉢を、彩りよく盛りつけるスタイル。
竹がテーマですね。
いやぁ、綺麗です。料理も最初から魅せられました。
中央の深紅の実は、ヤマモモですね。
主に西日本の山で自生している木ですが、多摩地域でも公園の植栽や庭木として見られます。
この実は、食用の栽培種でしょうけどね。
ホオズキ、ミョウガとともに、季節を感じる山里の味覚。
それにしても、彩りが良い。
胡麻豆腐。
これも旬のイチジク。
器が、これだけ季節外れの秋の紅葉型なのが残念。
前菜は、食材をあまりいじらず、山里の季節感と彩りを重視していましたね。
大満足ですよ。
お造り。
刺身こんにゃくに夏野菜。
上のグレードのコースだと、蒟蒻が魚になるんでしょう。
「山里」、「旬」、「彩り」と言う基本コンセプトは外してませんね。
お待ちかねの焼き物。
鮎の塩焼きを蓼酢で。
7月のまだ小振りな鮎。
頭からカブリツくのには丁度良い大きさでした。
笹かなにかで、燻してありますかね?
食感と香りが良い。
保温と香り付けのためでしょう、小さい炭が添えられています。
このあたりの一手間、二手間の加え方が、懐石料理らしくて素晴らしい。
炊き合わせは、かぼちゃと若鶏塩焼き。
止肴の夏野菜合まぜ。
夏らしく、ご飯替わりの冷やし稲庭うどん。
デザートは、トマトのコンポートとブルーベリーシャーベット。
氷に載って、涼しげで綺麗。
コンポートの上には、桑の実。
最後は懐石らしく、抹茶と甘味。
こんな風に“味”があって、小振りな茶碗は、自宅用としても使いたいですね。
でもギャラリースペースでは売ってませんでした。残念。
最初から最後まで、季節を感じられる彩り豊かな料理が続いて、贅沢な気分になる昼食でした。
食材的には後半、パワーが落ちてきた感じがしましたが、ランチですし、一番お得なコースですからね。
もっとリッチな食事を求めるなら、値段は上がりますが他のコースも選択できます。
私としては、鮎も食べたし、ボリューム的にも十分でした。
また、食後には離れの蔵で、竹林を眺めながら、珈琲か紅茶を飲む事ができます。
ごちそうさまでした。
西多摩の青梅市内で、こんな店があるなんて素晴らしいですね。
メニューは月替わりで、毎月それぞれ旬の味が楽しめるはずです。
ちょっと贅沢な気分で食事したい時に、都心に出なくてもこの選択肢を選べるというのは、有り難い事だと思いますよ。
秋の紅葉の時季には、是非また訪れたいお店です。
ちなみに、五日市の黒茶屋さんや、秋川の燈々庵さんと姉妹店だそうです。
燈々庵さんには行った事がないので、そちらにもお邪魔してみたくなりました。
かいせき・しつらえ 井中居 (いちゅうきょ)
所在地 東京都青梅市藤橋2-32営業時間
定休日 火曜日(祭日は除く)
駐車場 あり
最寄り駅 JR青梅線河辺駅 or 小作駅からバスかタクシー
H.P. http://ichukyo.net/index.html