鬼怒川温泉に宿泊した翌日、東京へと帰る途中の夏の昼どき。せっかく鬼怒川の上流まで来ているのだから、ランチには鮎の塩焼きでも食べて帰りたいところ。そこで、かねてから目星をつけていた、川魚料理の「船場亭」までやってきたものの、なんと休業日!。夏期は無休かと思っていたので、代わりの店のあてもつけておらず、さぁ困った!
途方に暮れつつ通り過ぎ、暫く道なりに車を走らせると、すぐ先に「川魚山菜料理 青木屋」と書かれた、救いの神様のような看板が出現しました(歓喜)
そんな店があることすら知らない完全にノーマークの店でしたので、一見の観光客相手の碌でもない店ではなかろうな?と心配しながらも、もう鮎を食べる気満々でここまで来ているので、ハズレ覚悟でハンドルを切り、車を乗り入れました。
🌀アクセス
青木屋さんの所在地は、栃木県日光市大渡。
最寄駅は東武線の下今市駅となりますが、駅からの距離は9km。バスに乗っても30分以上かかるので、車での訪問が便利なお店です。
車で行くなら、日光宇都宮道路の今市インターか大沢インターが最寄りとなります。
国道461号線沿いにあって、鬼怒川を渡る大渡橋の南詰を目標に進み、橋と東照温泉 旅籠福田屋との中間あたりに入口があります。
上の写真の看板を見落とさないように。
さて、国道から外れて細道を先に進むと、20台くらいは車の止められそうな広い駐車場が現れました。既に結構な台数の車がとまっていて、どうやら人気店である様子。
付近には川魚を炭火焼きしている、なんとも言えない香りが漂っていて….これは一発逆転、大当たりの店か?!
🌀外観と店内の様子
こちらの店では川に簗を設けていませんが、窓が開け放たれて開放感のある典型的な簗小屋の造りです。比較的新しく増築された建物のようで、全体に清潔感があり、すぐ隣には帳場や座敷席もある母屋(?)が繋がっていました。
もうすぐ横に鬼怒川が流れる絶好のロケーション。
建物のすぐ前では、鮎を正真正銘の炭火で焼いているところで、食欲をそそられる素晴らしい絶景(喜)。
これは間違いなく、大当たりの川魚料理店でしょう。
しばらく眺めていたくなる光景でした。
店内に入ると、広間に4人がけのテーブル席が並ぶ新館(?)と、それに繋がって座卓席もある旧館があり・・・
基本的に接待に使うような店ではないと思いますが、母屋には座敷席もあるようなので、必要なら確認して予約してもよいでしょう。
案内されたのが窓側の席だったので、鬼怒川の眺めが素晴らしかった。
涼しやかで旅情満点です。
鬼怒川に面したこちらのテラス席は、さらに鬼怒川を近くに感じられ、せせらぎの音や川風が心地良い特等席。
天候がやや不順だったし、同行の妻殿は羽虫の襲来を恐れるので、我々は大人しく室内のテーブル席に収まりましたが。
🌀メニューと料理
メニューを見ると、時期的にも鮎料理をメインとして岩魚料理や、たぶん川魚が嫌いな人向けの海老フライ定食やとんかつ定食、それに鳥のから揚げ定食などが並んでいます。
お値段は、観光地である日光近郊にしてはリーズナブルな設定ではないでしょうか。
それに、川魚料理店なのに「手打ち蕎麦」がメニューにあるのが良いですね。
鮎は食べたいけれど、サッパリ軽めの昼食にしたい気分のときには嬉しい選択肢です。
一品料理も各種揃っているので、どう組み合わせようかと悩むのもまた楽しい。
よく見ると、「うなぎの串焼き」なんて料理もあるのですね。
心惹かれるメニューですが、これを頼むと価格的にもメインが鮎から鰻にかわってしまうので自重しました(笑)
そんなこんな考えた末、鮎の塩焼きと刺身、それに手打ちそばの組み合わせで注文することにしました。
注文を終え、ふと窓の外を見ると、生簀の中に魚が沢山、泳いでいます。
これはイワナですね。
そういえばメニューに岩魚の刺身もありましたが、天然物ではなく、このような綺麗な水で養殖した岩魚だから、寄生虫の心配もなく川魚の刺身が食べられるのでしょう。青木屋さんはあゆ専門の簗ではなく、通年営業の川魚料理店なので、また鮎のシーズンオフにでも来たら、今度は刺身を含めた岩魚料理を味わってみたいですね。
そんなこんなで待つこと10分、「鮎の塩焼き」がやってきました(喜)
こんがり黄金色の焼き上がりで、焦げ付いてカサカサになったようなところもなく、絶妙な焼き加減じゃないですか。
お腹の側も良い色に焼けていて、鰭がどれもピンと立っているところに鮮度の良さを感じます。
大きさも骨を気にせずに頭からかぶりつける、塩焼きとしてはちょうど良いサイズ。時期的にも良かったようです。
早速、齧り付いてみると、外の皮はパリッと焼けていて、一方、中の身はしっとり柔らかい。
臭みなどは全くなくて、これは美味い!
川苔を食べて育った天然鮎の持つスイカのような強い香りまでは感じられず、腹の肝もスカッと空洞でしたが、この鮮度の鮎を、この焼き具合でだしてくれるなら何の不満もありません。大満足です。本当に美味かった。
やや遅れて「鮎の刺身」も到着。
鮎の刺身には、旬の海の魚のような脂ののりはありませんが、シャリっとした食感があって、爽やかで夏の到来を感じる味わい。
こちらも、最高級の天然鮎がもつ香りまではありませんが、鮮度の良さが感じられて十分満足なお味。きっと育った水も良いのでしょう。
もうずいぶん前のことになりますが、鬼怒川のもっと下流のとある観光やなで食べた鮎の刺身が、あまり満足のいく味ではなかったため、以来、鬼怒川の鮎にネガティブなイメージがあったのですが、ここの鮎は美味かったなぁ。
おかげさまで季節の味覚を堪能することができました。
こんなふうに、春の山菜、夏の鮎、それに秋から冬の松茸、河豚、蟹あたりを、毎年少しづつでも食べて過ごせたら幸せですねぇ。
また少し遅れて配膳されたのは、妻殿が注文した手打ちの「冷やしとろろそば」。
手打ちとは聞いても専門店ではないし、正直、それほどの期待はしていなかったのですが、あれっ?
色も良いし、切りむらも少なく整っていて、キリッと冷水で締められたらしき蕎麦は、瑞々しさが見てとれてすごく美味そうだぞ!?
所々にホシの散った蕎麦を、トロロ汁につけて味見させてもらうと、腰もあるし、蕎麦の風味も感じられる蕎麦の専門店も顔負けの逸品。
これは驚いた!
どうなってんだ、この店は?(喜)
こちらは、やや遅れてやってきた私が注文の「鴨せいろ」
「かもせいろ」をメニューに加えるくらいだから、ひょっとしたら蕎麦にもそれなりの自信があるのかも?なんて思いがよぎってはいました。
つけ汁を見ると、色は薄めで具材はこんな感じ。
期待しつつ食べてみると….あぁ残念↘︎。
蕎麦は美味いけれど、つけ汁は味が弱くて、専門店の鴨汁には遠く及びません(哀)
とろろ汁で食べたほうが絶対的に美味い蕎麦でした。
鴨せいろを提供しようとする心意気は買いますけどね。
私は次に来たときには、迷わずとろろそばを注文します。そうすれば間違いなく幸せな気分になれますから。
隣の有名店がお休みで、思いがけず入ったお店でしたが、総じて気分は逆転満塁ホームラン。
味よし、景色よし、価格もリーズナブル。
大袈裟に言うなれば、鬼怒川縁に小さな桃源郷を見つけた思いなのでした。
【青木屋】
■所在地 栃木県日光市大渡1053
■営業時間 10:30-20:00
■定休日 12月~4月は月曜、他は無休
■最寄駅 なし
■駐車場 あり