山形県の庄内地方、鶴岡市西方の日本海に面した湯野浜温泉。
約1000年前、怪我をした亀が見つけて湯治していたのが起源という、ほのぼのしたエピソードの残る、歴史ある温泉地です。
宿の目の前には、白い砂浜と青い海が広がります。
夏の日本海は、水が澄んでいて波も穏やか。
その海の幸も味わえるし、晴れた日には海に沈む夕日も眺められる。
映える絶景!
東京から近いと言い難いのが難点ですが、訪れる価値のある温泉地です。
・・・と言うか、個人的に気に入っちゃって、これが3回目めの訪問。
湯野浜温泉への道のりは、関越道を経由して新潟方面から北上すると、日本海東北自動車道の終点となる村上市から先は、海沿い一般道を走るドライブルート。
幾つもの風光明媚な海水浴場を横目に見ながら、
渋滞もなく快適な道を、ひたすら一時間も走ると、
やがて、遠くに霞む鳥海山の手前に、海沿いにひらけた温泉街が見えて来ます。
オーシャンビューの宿泊施設が幾つも並ぶなか、向かうのは数年前に初めて宿泊して以来、すっかり気に入ってしまっている『游水亭いさごや』さん。
名前の通り、道路を一本隔てるだけで、直ぐ目の前が砂(=いさご)浜となっている温泉旅館です。
入口で車を預け、
石庭風に設えられた小庭を横目に・・・
石畳の通路を奥へと進むと・・・
飾られた綺麗な生け花に迎えられ、ロビーに辿りつきます。
このあたりまでの雰囲気で、既に「ちょっと良いんじゃないかい?」とアゲアゲ気分。
池を眺められるラウンジの床は、ピカピカに磨かれたフローリング。
趣味が良くて、ゆったりできるこのロビーラウンジも、なんだか気に入ってます。
抹茶をいただきながらチェックインを済ませ・・・
部屋に一度案内された後、時間に余裕があれば、このラウンジに戻ってきて『鳥海山氷河水・水出し珈琲』(500円)と『だだちゃ豆ソフトクリーム』(450円)を注文するなんてのもお薦め。
これが絶品なんです。
「水出し珈琲」は、このクールなマシーンで淹れています。
水も美味しいのでしょうけど、苦みが少なくて雑味を感じない、サッパリした珈琲を味わえます。
庄内名産のだだちゃ豆を使ったソフトクリームは、黒蜜をかけていただくのですが、クドくない豆の自然な甘みが口に広がり、水出し珈琲との取り合わせもGood。
客室の方は、特に広い部屋ではありませんが、清潔感があって海を正面に見るオーシャンビュー。
目の前の砂浜を一望することができます。
東北の日本海側となれば、午後になると太陽は海に傾いて行き・・・
部屋からは、ド正面に沈んで行く夕陽を眺めることができます。
もう若者とは言えず、暑さにも弱くなった身にとっては(哀)、“空調の利いた部屋で”、“椅子に座って”、“御茶を飲んで寛ぎながら”、この景色を眺める時間は正に至福。
オーシャンビューの部屋に宿泊している者の特権ですね。
さて、夕日の余韻を楽しんでいると、時刻は19時くらい。
遅めの時間に指定していた夕食となります。
夕食は、「茶寮月岡」という食事処でいただくプラン。
窓側の席が取れているなら、夕日を見ながら食事ができます。
でも、窓側の特等席は数に限りがありますから・・・。
私は、連泊したときに一度、窓側の席を用意してもらったことがある程度です。
その他の席でも、ちょっと首を伸ばせば夕日は見えますが、しっかり見たければ客室で景色を楽しんでから食事にするのが良いでしょう。
客室に案内して貰うときに食事の案内がありますから、窓側の席かどうかを確認してから、夕食の時間を決めれば良いかと思います。
窓側だったら、当然、食事の時間も夕陽に合わせましょう。
料理は、当然ながら海の幸が中心。
前菜は、煮アワビとだだちゃ豆。
お造りは、庄内浜地魚盛り合わせ
焼き物に鱸の雲丹焼き
米どころらしく、はえぬき麺
肉がないと不満な客も多いでしょうから、山形牛の一口ステーキ
「これでどうだ!」といったメイン料理は、鮑の源泉蒸し
これに山形が誇る地酒でも追加すれば、もう言う事なし。
デザートの頃には、もう満腹で苦しくなっています。
ここの館長は「北大路魯山人」がお好きなようで、茶寮月岡の出入り口には、本物の魯山人作の食器が展示してあります。
ちょっとしたギャラリーですね。
じっくり見たい気もするのですが、ここを通る時は空腹時か、酔っぱらってご機嫌になっている時なので、いつもちょっと見するだけ(笑)
料理に使われる器も、魯山人好みというか魯山人写しの器が多く使われているので、目でも楽しめます。
魯山人の名前をだすからには、当然、料理の内容にも精一杯こだわっているわけですから、その点でも好感度アップですね。
夕食の後は、バタバタと部屋に戻って、夏の期間中に砂浜で上げられている、ミニ花火大会を眺めました。
にとっては、これだけの要件を揃えられれば、もう完璧な夏の休日。
温泉旅館ですから、お風呂も気になるところです。
泉質は、海沿いの温泉らしく無色透明のナトリウム・カルシウム-塩化物泉。
体がよく温まるお湯です。
海の見える浴槽があったり・・・
源泉を掛け流している浴槽があったり。
客室が50室程度と、巨大ホテルではないせいか、団体客が一度に押し寄せて大混雑するということもなく、居心地が良くて眺めの良いお風呂です。
翌日の朝食は、こんな感じの和食。
焼魚にイカ刺しなんかも付いて、多彩で何の不満も感じない内容になっています。
ここのスタッフは、接客も丁寧。
全体的に不満な点が、ほとんどないんですよね。
宿泊料金から考えると、安さがウリの旅館ではありませんが、超高級旅館でもありません。
何もかにもが最高級というわけにはいきませんが、このくらいの料金で、これだけの満足度が得られるのですから、リピートしたくなるってもんです。
夕陽も含めて、海の景色は一級品。
波も穏やかで、海水浴にも好適。
砂浜がこれだけ近くて、設備の整った清潔感のある旅館って、いっぱいありそうでいて意外と少ないと思います。
今回の旅行では湯野浜温泉が終着点でしたが、酒田はじめ庄内地方には、美味いものや美味い酒、その他の名所旧跡が沢山あります。
さらに北へ足を伸ばして、秋田県境にある鳥海山麓の海は岩牡蠣の名産地。
この温泉を拠点に、周囲を観光するのも良いでしょう。
夢のような憧れの地ではなく、また遠からぬ時期に訪問するであろう、お気に入りの温泉旅館なのです。
【游水亭いさごや】
山形県鶴岡市湯野浜1-8-7
JR羽越線鶴岡駅よりタクシー25分