(2018.6 閉店 老舗の系譜が….)
何気に優良な飲食店が点在する西武池袋線ひばりヶ丘駅南口界隈。
ここの住宅街の一角に、戦後の蕎麦打ち界の巨人が、自宅を改装して営む有名店があります。
手打ちそば『たなか』さん。
ここのご主人は戦後、蕎麦屋といえば「安く早く」の機械打ちの店ばかりとなる中、蕎麦の挽き方や出汁などに拘った本物志向の手打ち蕎麦店のモデルを創り出し、それが商売になることを立証して見せた方なんだそうです。
その「明月庵田中屋練馬本店」と言う繁盛店は、今はもう閉店してなくなってしまいましたが、何でもお孫さんが蕎麦の道を継ぐ志を持ったことを切っ掛けに、再び自宅の一階を改装して小規模ながら蕎麦店を始めたとのことです。
店があるのは、西東京市ひばりヶ丘一丁目。
駅から歩くと、パルコの南側方向へ数分の距離になります。
駐車スペースは、店の前に狭くて停めにくそうなものが一台分。
車で来るなら、周辺のコインパーキングに停めた方が無難ですね。
角にりそな銀行のある市道を西に入り、蕎麦の柳屋さんを通り過ぎて、行き止まりが幼稚園となる路地を北に入った一番奥にありました。
外観は完全に一軒家の民家で、看板もごく控えめに「そば」と書かれた木板のみ。
いつも混んでいるとの話は聞いていたので、平日昼間の11時過ぎと早めに到着。
玄関を開け、靴を脱いて上がりました。
中に入ると、物腰の柔らかい花番さんが席まで案内してくれます。
狙い通り、先客はまだ一組。
民家のリビングとしては広めのスペースで、壁紙の白いシンプルな内装の店内。
しかしよく見ると、灯具も椅子も北欧家具の有名なデザインのもの。
きっと、こだわりの趣味人なんですね。
開けられた洒落た木枠の窓からは、心地よい風が入ってきます。
なんともホッとするような居心地の良い空間。
花番さんに「ここへは初めて来ました」と告げたら、こんなリーフレットを持ってきてくれました。
ご丁寧にありがとうございます。
料理のイメージが湧いてきますね。
お品書きを見るとメニュー構成もシンプルで、麺類は「せいろそば」「かけそば」「ささうどん」の三種類のみ。
そして、大変良心的な価格設定になっていることに驚きます。
それではと、「御前せいろ」に「舞茸の天ぷら」、デザートに「そばがきぜんざい」を注文してみました。
「御前せいろ」(540円)は、細く切り揃えられた蕎麦で端正なお姿。
「舞茸の天ぷら」(648円)は、食べやすいように切り分けてから揚げられています。
サクサクとして美味しいし、ボリュームもあります。
二人でシェアするくらいがちょうど良いかも。
そして、瑞々しく如何にも美味しそうな蕎麦を口に含むと・・・
・・・ありゃりゃ? ??
強く香るでもなく、キリッとコシがあるでもなく、期待に反して平凡なお味。
季節的に確かに新そばの時期ではありませんが・・・これは偶々なのかな?
蕎麦の値段だけ見れば、「値段の割には美味しいよ」と言えなくもないんですけど。
前評判の高さから期待しすぎたのかもしれません。
・・・って、そりゃ来歴を聞けば極限に期待するでしょう!!
蕎麦湯は、透明であっさりしたもの。
蕎麦を食べ終えた頃を見計らって、「そばがきぜんざい」(648円)が配膳されました。
しっかり甘いこしあんに、しっかり存在感のあるそばがき。
私には少々甘みが強めでしたが、蕎麦屋らしいデザートで結構なものでした。
「そばがき」って作るのに手間がかかるそうで、よくメニューに「忙しい時には注文ご遠慮ください」なんて書いてある店があるので、食べたくてもつい気が引けてしまうのですよね。
その点、ここのメニューにはそんなこと書いてないので、遠慮なく注文して味わえました(喜)
わかりづらい細い路地の先にあって、人気のある混雑店。
しかも駐車もしづらい店となると、行列嫌いの私の足を遠ざけさせるには十分な理由となるのですが、それでも評判の高さから一度は来てみたかったんですよね。
後々調べてみると、「さすがに巨匠はご高齢でここも引退されたようだ」とか「実はせいろより、かけ蕎麦の方が美味い」とか「玉子焼きを食べなきゃダメ」だとかコメントが色々でてきます(笑)
私自身、「舞茸天ぷら」は量が多かったので、一人の時は「海老の天ぷら」の方が良かったかも?・・・なんて思うところもあります。
休日の込み合ったピーク時を外せば、居心地の大変良いお店です。
いずれ再訪問して、違うメニューを試してみようかと思っています。
【手打ちそば たなか】
▪所在地 東京都西東京市ひばりが丘1-15-9
▪最寄り駅 西武池袋線ひばりヶ丘駅 南口下車数分
▪営業時間 11:00~15:00(L.O.14:30)
▪定休日 火曜日 第三水曜日
▪駐車場 1台あり。周辺にコインパーキングあり