まだ梅の花が咲き残る3月の週末、家族の祝い事で、高尾にあるいろり炭火焼料理の
うかい鳥山で食事をしてきました。
多摩エリア出身者には言わずと知れた、ハレの日用レストランチェーン「うかいグループ」発祥の第一号店です。
うかい鳥山といえば、元々は猟師が獲ったスズメなどの野鳥を、囲炉裏の炭火で焼いて食べさせるスタイルがウリの店でした。しかし、希少な渡り鳥も含めて野鳥を一網打尽にしてしまう「かすみ網猟」が禁止されたり、そもそも野鳥の数が自体が減少してしまったこと等から仕入れが困難となり、今は野鳥の代わりに鶏肉や和牛などをメインの食材にしています。
私が子供の頃は、幹線道路のあちこちに「うかい鳥山」の広告看板が掲げられていて、囲炉裏で肉を炙って食べると言う、山里料理の風情と言うか、非日常のエンタメ性に憧れを募らされていたものです。まぁ、おねだりしても、親に気安く連れて行ってもらえるような類の店ではありませんでしたけど。
ちなみに、かつて高度成長期の多摩エリアには、レジャー客や社用族相手に、スズメやツグミなどの野鳥を囲炉裏で焼いて食べさせる「鳥山スタイル」のお店が、他に数十店舗もあったそうです。しかし、今はここの“うかいさんがオーナーの”うかい鳥山の他には、長沼の鎌田鳥山(ここが最古の鳥山らしい)と、東大和の貯水池鳥山の二店くらいしか残っていません。時代とともに里山も減り、田圃も減り、害獣扱いされたスズメ等の野鳥も減って、一つの食文化も無くなりかけているってことですね。
そんなうかい鳥山さんですが、実は私は未訪問。
系列の懐石料理店「うかい竹亭」さんや、大和田の「とうふ屋うかい」さんで食事したことはあるのですけど、「鳥山」さんに行く機会には恵まれませんでした。
妻殿にも行ったことがあるかどうか聞いてみると
「昔、忘年会で雀の丸焼きを食べたけど、うーん….」とのこと。
雀の丸焼きを食べたって、そりゃあ相当昔の話であって、今となっては大変羨ましくはあるのだけど、その当時まだうら若かった女性には、可愛いスズメちゃんの頭の付いたままの、小さくて食べるところの少ない鳥の串焼きは、どうやら美味しい食体験とはならなかったようです(笑)
それでも囲炉裏での炭火焼って、やっぱり楽しそうだし、今は雀がメインではないと言うことで、ランチを予約して向かうことにしました。
🌀アクセス
うかい鳥山さんの所在地は、八王子市南浅川町3426。
大雑把に言うと、高尾山の麓です。
最寄駅は、京王高尾山口駅で、駅前から20分毎にマイクロバスが送迎してくれるので便利。
車で行くなら、甲州街道を西に向かい、高尾山口の駅を通り過ぎ、圏央道高尾山ICも通り過ぎ、「うかい竹亭」入り口の白い看板を通り過ぎた少し先の緑色の「うかい鳥山」の入り口看板を見落とさずに注意して左折、そのまま1.5車線程度の幅の狭い一本道をクネクネと山の方へ登った先、冒頭の大きな灯籠が見えてきたら到着です。高尾山ICを降りたら3分くらいで着く距離。
駐車場は、大きな灯籠の先、道の脇に広い砂利敷きのスペースがあるので、好きなところに適当に駐められます。
しかし、車を降りて周囲を見ると、越中五箇山から移築した合掌造りの素晴らしく豪壮な建物があったり・・・
これまた素晴らしく趣のある門構えのある藁葺き屋根のお屋敷が並んでいたりして、どこが受付なのか? 入り口なのか? はたまた母屋なのか? さっぱり分からない(惑)。
どの建物も主役級!の存在感(驚)
人の流れを見ていると、どうやら道沿いに奥へ歩いた先にある、この建物が入り口のようです。
🌀外観と店内の様子
門を潜って建物の中に入り、スタッフに予約している旨を告げると、仲居さんが食事場所まで案内してくれるようです。
この建物の中に食事処があるのかと思ったら、さにあらず。一旦外へ出て、渓流沿いの小道を奥へ奥へと進んで行くので、着物姿の仲居さんの後に続いて歩きます。
途中、鯉の泳ぐ池を眺めつつ木橋を渡ったり・・・
いくつもの素敵な離れを横目にしながら、さらに歩きます。
昔話の世界のような、山あいに立ち並ぶ古民家群の中、ここは一体どこの桃源郷かと、なかば感心し、なかば呆れるくらいに広い園内をさらに進むと・・・
ようやく昼食会場となる、こちらの大きめの建物に辿り着きました。
麓では散りかけている梅も、ここ高尾の軒先ではまだ九分くらいの咲き具合。
これもどこからか移築してきたのであろう、この豪壮な古民家の屋内は、建具を全て取り外して、畳敷の大広間に改装されています。そこに据えられたテーブル席が十セットばかり。
ここの館内には本物の囲炉裏はなく、各テーブルに炭を置くための炉がきってある仕様。
部屋の入り口にあった、こんな囲炉裏の席である方が風情があって楽しいのですが、まぁ、テーブル席の方が座りやすいのは間違いありません。
他の離れの建物の中は、どうなっているのか気になるところですが、ランチコースの会場は、この大きな建物のみとなっていました。
途中、あんなに素敵な大小様々な離れを見せつけられてきましたから、いつかどこかの離れで食事のできるプランを予約して、再訪してみたいところではあります。
🌀メニューと料理
この日のランチコースは、メインとなる炭火焼を鶏にするか、牛にするか、鶏牛半分づつにするかの3種類。
サイドメニューとして、別にタラバガニの炭火焼や、フグの唐揚げなどを別料金で追加できるようですが、ボリューム的には必要ないかな。
今回は、いろいろ食べてみたかったので、牛鶏コース(11,000円税込サ別)を予約してあります。
まず先付けとしてやってきたのは「だいこん田舎煮」
大根は、聖護院大根を使っているとのこと。旬の京野菜ですね。
口にすると、お出汁が染み込んでいて柔らかく、柚子の風味でとても美味しい。
添えられた鶏つみれは、軟骨入りでコリコリとした食感で、こちらも結構なお味です。
続いては「ゆりね白味噌仕立て」
月光百合根と言う、糖度がメロン以上の百合根を使っているとか。
あとで調べてみると、北海道の十勝地方で僅かに生産されている希少種のようです。
真薯にしてあるのかと思ったら、丸ごと百合根でした。贅沢です(喜)
甘い百合根を白味噌で煮ていますから、ホクホクとしてさらに甘い味わい。
上に載った蕗の薹の天婦羅の苦味が、ちょうど良いアクセントになっています。
珍しい食材に出会えた上に、季節感も感じられて、大変結構です。
魚料理は、「佐久鯉洗い」か「川魚塩焼き」のどちらかを選ぶのですが、追加料金を払って両方いただくこともできます。川魚好きとしては、片方だけを選ぶなんてできません(笑)
まずは「佐久鯉洗い」
佐久は食用鯉の名産地ですから、もちろん臭みなんかなくて美味。
洗いではなく、刺身で食べたいくらいです。
「川魚塩焼き」の方は、焼き具合が素晴らしい。
この大きさからすると、丸ごと齧ると骨が気になるかな?と思いましたが、炭火で丁寧に焼いたのでしょう、頭から食べても全く骨が気にならずに、香ばしい味わいを楽しめました(驚)。唐揚げなら解りますが、炭火焼でこんなに上手い具合に焼けるなんてさすがです。自分で焼いていたら、なかなかこれだけ上手くは焼けないはずです。
使っているお皿の趣味も良いなぁ(喜)。
続いて、口直し的な「白湯鍋」
鶏肉、ネギ、クレソンを目の前の鍋で煮立てて仕上げてくれます。
さっきのつみれもそうですが、うかい鳥山で使用する鶏肉は、富士山麓の御殿場にある契約農家から仕入れる自慢のもの。
肉厚で適度に柔らか、脂がくどくない肉質と感じました。
ここで、いよいよ炭火の登場。
カチンカチンに火のついた備長炭が、小さな火鉢に入れられてテーブルまで運ばれてきましたが、なんともごつい金色の網(?)が上に被されました。
こんなゴツい網では、炭火が見えないので風情に欠けるんだけどなぁ….と不思議に思いましたが、どうやら焼いて食材から出てきた脂が、真下の炭火に落ちることなく、横溝を通って周囲の大溝に溜るので、煙が上がらないようになっているのですね。服や髪に匂いが付くことも防げるのでしょう。なるほどねぇ、上品な高級店仕様の炭火焼きとなっています。
串打ちされ、カッコよくザルに並べられた食材は、鶏、牛、原木椎茸の3種類。
仲居さんが網に載せて、時々焼き具合くれます。
牛肉の部位は、デフォルトではランプとなっていますが、追加料金を払ってサーロインにランクアップすることも可能。
年々、脂の強い肉には胃が悲鳴を上げるようになってきていますので(哀)、ランプ肉で十分なのですが、ものは試しと言うことで、一人分はサーロインにしてみました。
手前の赤身が鮮やかな色の方がサーロイン。
食べ比べてみると、ランプでも十分柔らかくて美味しくて、全く何の不満もありません。
サーロインの方が、気持ち柔らかめで、脂の旨味をより感じますが、ランクアップさせるまでもないかな。
鶏肉は身が厚いので、タレを付けながらじっくり焼きます。これも仲居さんが様子を見にきてくれるので、焼き加減に心配は無用。
椎茸は身が厚くて、焼くと出汁の旨味の水分が傘に溜まってジューシー。
やっぱり炭火で焼くと美味いよね。
鶏肉にボリュームがあるせいか、牛肉の脂身のせいか、だいぶ満腹に近くなってきました。
ボリューム的には、既にもう大満足です。
季節の菜花のお浸しで口をさっぱりさせた後は、締めの麦とろご飯となめこ汁。
これも好物ですから、頑張って食べます(笑)
デザートは和の甘味で、小さめの焼き黒蜜とうふ。
洋菓子とか出されなくてよかった。
いや、満腹です。ごちそうさまでした。
季節感はあるものの、ありきたりな里山の食材を素朴な調理法で提供しているだけと、一見、思わせといて、実はその食材は相当に吟味し厳選されたものが使われています。
店側の「どうだっ!!」と言う声が聞こえてきそうなお料理たちでした。
帰り支度をしていると、「山野草園で水芭蕉が咲いてるかもしれませんよ」と仲居さんが教えてくれました。
いくら高尾とはいえ、仮にも東京都内で水芭蕉が見れるの?なんて半信半疑でしたが、食後の散歩にちょうど良かろうと寄ってみることに。
池の横を通り、敷地内をさらに奥へと進み・・・
せせらぎに沿うようにさらに歩き、途中、長野で見る夫婦道祖神に見守られながら、上流へ歩いて行くと・・・
なんだか、湿地帯のようなところに出ました。
湿地に生えてる草花をよくみると、おぉ、本当に水芭蕉が咲いてる!
高尾の周辺の山からの綺麗な清流が流れ込んでいる湿地なので、環境が合っているのでしょう。
もう少し後の時期の方が、花の数も増えるのかもしれませんが、良いものを見せてもらいました(喜)
斜面には、福寿草がいくつも咲いています。
早春の季節を感じられて、これも眼福です。
この花は、なんだってかな?
これも可愛らしい花でした。
うかい鳥山では季節ごとに、春には桜、夏は蛍、秋には紅葉も楽しめるとのこと。
食材も季節ごとに旬のものを用意してくれるのでしょうから、また違う季節に来る楽しみがあります。
うちの妻殿は時々、発作的に蛍を見たがったりするので、遠出しなくてもここで蛍を見れるのなら、夏にまた来てみるのもありですね。
その時は夜ですから、お酒も飲めるように電車で来ようかな。
小旅行の代わりと思えば、食事代もそう高く感じないかもしれません(笑)
店舗情報
■所在地 八王子市南浅川町3426
■営業時間 平日 11:30~15:00L.O.|17:00~21:30(19:00 L.O.)
土日祝 11:00~21:00(19:00 L.O.)
■定休日 火曜日 年末年始
■最寄駅 京王線 高尾山口駅 送迎バスあり
■駐車場 有り