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初!歌舞伎 観劇作法の備忘録@銀座・歌舞伎座〜一度は観るべき江戸文化

なんと有り難いことに、演劇好きの親戚筋から「歌舞伎」のチケットをいただく機会に恵まれまして、妻殿と銀座四丁目の歌舞伎座まで観劇にいって参りました。

これが人生初歌舞伎です(喜)

六月大歌舞伎の午前の部で、演目は「傾城反魂香」「児雷也」「扇獅子」の三つ。

メインの演目となる「傾城反魂香(けいせいはんごんこう)」は近松門左衛門の作品で、口下手で弟弟子にも先を越されてしまう大津絵の絵師と、それを支えるお喋りな女房との人情噺。
猿之助が得意とする演目「猿之助四十八撰」の一つでもあるようなので、期待大です。


そもそも歌舞伎と言えば、何と言っても「江戸文化の華」。
江戸では決してないけど、多摩エリアだって一応は東京のうち。
地方在住者よりは行きやすい場所に住んでいるのだから、一度は観てみたいと思ってはいたのですが、敷居が高いんですよねぇ….
・知識もなく古典劇を観ても、内容を理解できるのか?とか、
・素人厳禁の謎の掛け声とか作法とかあって、素人が行っても場違いではないか?とか、
・チケット高そうだし、そもそも入手できるの?とか、
よくわからないところが多々あって、それがずっと観劇に一歩踏み出せない原因となっていました。

しかし、チケットが手に入ったのだから、あとは事前によく予習して向かえば、なんとかなるってものでしょう。


チケット手配

歌舞伎を観るには、まず、チケットを手に入れないと始まりません。
今回はいただきもののチケットがあるので、注意点はそれを当日忘れずに持参することのみ。

歌舞伎座の席には、一階と二階にある1等席2等席、三階の3階A席3階B席、それに一階桟敷席の5種類があります。
いただいたのは、どうやら1階の1等席のチケットだったようで、購入すると16,000円/席もするようです(驚)
ありがたや、ありがたや。

でも、3階A席なら5,500円、3階B席になると3,500円ですから、3時間以上の上演時間を考えると、自腹でも、このあたりの席ならリーズナブルかな。
まずは、雰囲気だけでも味わってみたい、歌舞伎初級者にはオススメかと思います。
当然、舞台からは遠くなりますけど。

一方、憧れるのは一階壁際に並ぶ桟敷席(さじきせき)
こちらは1席17,000円もしますが、二人一枠で、テーブル付きの掘りごたつ形式の席になっていて、予約すると別料金になりますが、席までお弁当を届けてもらえるようです。

舞台に向かって左側の桟敷席は、目の前の花道を通る役者を間近に見ることができますが、位置的に後ろ姿を見ることになります。一方、向かって右側の桟敷席からは、花道は遠くなりますが、通る役者はこちらの正面を向いてくれます。

どちらの桟敷席も壁際にあるので、舞台は正面向きではなく、やや斜めに見ることにはなります。

あとは、劇場に入って気づいたのですが、1階1等席と2等席の間は通路で隔てられているのですが、2等席の最前列は、1等席とほぼ変わらない位置でありながら2等の料金で、しかも足元が広いという、なかなかお得な席になっていました。
でも、帰宅して検索してみたら、この列の席はやっぱり人気で、予約が難しいようです。

(各席料は公演によって変動あり)

自分でチケットを購入するなら、公演情報や空席状況の確認も含めて、歌舞伎公式情報サイト「歌舞伎美人」から、ネット上で簡単に済ますことができそうです。
なんとも便利な世の中になりました。

空席状況をざっと見ると、リーズナブルな3階席と、席数が少なくてリッチな気分を味わえる桟敷席が早く埋まるようですが、予約困難というほどではありません。
あまり選り好みしなければ、少なくとも大相撲のチケットよりは断然簡単に購入できます。


鑑賞作法・手順

◯服装・マナー
初歌舞伎観劇となると、雰囲気がわからなくて、何かやってはいけないタブーとかあるんじゃないかと、ちょっと心配になります。
ネット検索して確認したところ、ドレスコードは基本的にないとのことなので、着物やドレス、スーツで行く必要はありません。
ジーンズでも何の問題もありませんが、動くとガサガサ音がするような生地の服は避けるべきでしょう。
ただ、そうは言っても(元々は大衆文化であったのだけど)、歌舞伎の観劇ともなると、やっぱりある種ハレの場でもあるので、実際には小綺麗で洒落た格好の方が多かったのも事実。
和服の御婦人もチラホラ。
しかしまぁ、あまり気にしすぎる必要はないでしょう。
暑い日だったので、我々もチノパンツにシャツ程度の格好で出かけました。

その他、当然のこととして、
・時間に余裕を持って席につく
・携帯等はマナーモードにして静かに鑑賞する
・帽子はとって、背もたれに背をつけ、行儀よく座る
くらいのことに気をつければ十分でしょう。
このあたりは映画館でも、クラシックのコンサートでも同じですよね。

あとは、「いよっ、〇〇屋ぁ!」など、客席からかけられる「大向う」と呼ばれる謎の掛け声ですが、これは観劇常連の超上級者達が、絶妙なタイミングを見計らって掛けるもので、これがなくては寂しい、もはや演劇の一部分。我々初心者は気にする必要も、真似する必要ありません。下手なことすると演技がブチ壊しになって、その後は針のむしろ状態になること必定ですので、初心者は馬鹿なことをしてはいけません。
この日はコロナ後の影響からか、想像していたよりも大向うの掛け声がかかることは少なかったですね。
リラックスして観劇だけに集中しましょう。


◯食事(弁当)の用意
午前の部だと11:00開演で、一幕毎に休憩時間があり、終わるのが3時頃ですから、この休憩時間に食事をとる必要があります。
この幕と幕の間の休憩時間を幕間(まくあい)と呼び、幕間に食べる弁当が「幕の内弁当」です。
幕の内弁当は、歌舞伎座の中にある売店でも売っていますが、一幕目と二幕目の間の長い幕間でも30分程度しかありませんので、買いに行く時間がもったいないので、予め入場前に購入しておくほうが安心です。

以前は歌舞伎座の道路向かいに、歴史のある有名な弁当屋がありましたが、コロナ騒動の間に閉店してしまいました。
では皆さん、どうしているのかとネットで調べてみると、近くの銀座三越地下食料品売場で、いろいろな幕の内弁当を購入できるとのことだったので、10時の開店にあわせて銀座三越へ。

地下に降りてみると、なるほど、観劇客目当てと思われる弁当屋がいくつも店をだしています。

美味そうな幕の内弁当が何種類もあって・・・

どれも普通の駅弁なんかよりもはるかに豪華で、選ぶのが楽しくなるくらい(喜)

椅子席で食べやすそうな、お稲荷さんや握り寿司なんかもあり、選り取り見取り。

三越の地下、弁当の購入にオススメです。

ちなみに、歌舞伎座の隣の席にいた女性グループは、一幕目が終わって席を立った後、二幕目を抜かして三幕目に戻って来ていました。
きっと、30分で慌ただしく席でお弁当を食べるのを嫌って、二幕目を犠牲にして外の店でゆっくり食事をしてきたのでしょう。
一幕目の市川中車(香川照之)推しだったようで、それで十分だった様子。
観劇慣れしてくると、楽しみ方は人それぞれあるようです。
(へぇ、あの類の騒動を起こしても、女性人気が離れないってこともあるんだなぁと、変に感心をさせられました)


◯いよいよ劇場へ
弁当と飲み物を調達できたら、いよいよ歌舞伎座へ向かいます。
銀座三越から歌舞伎座までは歩いて数分の距離。
外はやたらと暑いので、晴海通りの地下道を歩いて行きました。

案内表示に従っていきますが、歌舞伎座に近づくにつれ、和装の女性が増えてきます。

観劇のお姐さんたちが着物で並ぶと、絵になりますねぇ。

歌舞伎座は、この地下道に直結しています。
地下一階は大きなお土産もの売り場になっていました。

欧米人が喜びそうな、江戸レトロなお土産が沢山あって、ゆっくり眺めると楽しそうでしたが、開演の時間が近づいてきたので一階の劇場入り口に向かいます。

でも「お土産は帰りに見よう」なんて考えていたら、昼の部の終わりの頃には超が付くほどの大混雑。
まるでクリスマスのディズニーランドか、年末のアメ横状態。
とても買い物をする気にならずに退散しましたが、コロナ後、やっと客足が戻ってきているようで劇場側としては一安心でしょう。

エスカレーターに乗って地上に上がり、一階正面入り口に回り込みます。
しかし、初心者はここで入場前にもう一手続き、イヤホンガイドをレンタルします。


◯イヤホンガイドのレンタル
入場前に、入口前にイヤホンガイドのレンタルショップがあります。
劇の進行合わせて、難しいセリフ回しの説明や役者の紹介、見どころなどを解説してくれますので、これ、初心者には必需品。
理解度が全然違ってきますので、料金は千円前後ですので、ケチらずレンタルすることを推奨します。
当日レンタルだと、現金が使用できず、支払いは交通系ICカードなどのみになるので注意。

他の演目では使えませんので、帰りがけに忘れずに返却のこと。


◯入場、筋書きの購入
一階正面入り口でチケットをもぎってもらって入場したら、後は席を確認して、トイレを済ませ、開演を待ちましょう。

下の写真に写っているあたりが一階1等席で、奥の壁際に横に並ぶのが桟敷席
いつか、何かの記念日にでも、優雅に桟敷席で観劇してみたいなぁ。

イヤホンガイドの解説があれば観劇に不安はないのですが、入場してすぐの館内ロビースペースには、

映画でいうところのパンフレットである 「筋書」という解説本が売られています。
価格は1,500円前後。

開演前に熟読するほどの時間はありませんが、記念にもなるし、帰宅してから読んでも復習するのも楽しいので一冊どうでしょう。


◯観劇、食事

歌舞伎の演目は、その内容によって大きく3つに分類されるようで、
つ目は、当時の主な観客である江戸の町人の暮らしとは縁遠い、公家や武家の世界の出来事や、江戸期より前の時代の歴史上の人物や事件を題材にした「時代物(じだいもの)」
つ目は、江戸の庶民にとって、身近で日常的な暮らしや情愛を題材にした現代劇である「世話物(せわもの)」
つ目は、元々、踊りから始まった歌舞伎らしく、舞踏や舞踏劇で構成される「所作事(しょさごと)」となります。

今のテレビの娯楽番組なら、現代ドラマ時代劇歌謡番組ってところでしょう。
お笑いは別に落語がありますから、庶民の好む娯楽って、江戸の頃からそう変わっていないのかもしれません。

この日の演目に当てはまると、傾城反魂香は時代物かつ世話物、児雷也は時代物、扇獅子は所作事となりますから、バランスのよい組み合わせとなっていました。

さて、近頃信じがたいほどゴタゴタ続きの歌舞伎界ですが、この公演の主役のはずだったはずの猿之助はまさかの降板。
ある意味、歴史的な公演とも言えるのかな。

絵師のお喋りな女房を演じる猿之助の演技を見ることはできませんでしたが、代役の演技に全く不自然さを感じるようなところがなく、急な話だったはずなのに大したものだと感心させられました。
歌舞伎界の層は、そんなに薄くはないってことなのでしょう。

一方中車(香川照之)の方の評価をネット上で検索してみると、「中車は稽古熱心でメキメキ上達しているけれど、まだ演技の幅が狭い。公演が続くと喉を痛めて声量が落ちる」なんて言われていましす。
そうするとこの「傾城反魂香」の絵師のように、現代ドラマ的な人情噺で、セリフよりも身振りで演技するような役は、今の中車にはきっと、うってつけなのでしょう。
いささかオーバーアクションなのでは?と感じることはありましたが、きちんと目立つべきところは目立ち、笑いを取るべきところは笑って取っていました。

まぁ正直、私は素人なので、難しいところはよくわかりません。
でも「これが〝見得を切る〟ポーズか!」とか、「歌舞伎って、こんなに宙返りとかするんだぁ」とか、「生演奏っていいなぁ」とか、初心者的には素直に色々と楽しめたので、まずは十分です。
いや、本当にチケットありがとうございました(喜)


座席で慌ただしく食べたとは言え、食事も観劇の楽しみの一つ。
幕間に食べたのは、あさり飯の幕の内弁当と・・・

天むす弁当。
ちょっと欲張って食べ過ぎました(笑)

さすが、三越の地下で売っているものだけあって、どちらも美味い!
でも、テーブルのある桟敷席で食べたら、もっと食べやすかっただろうなぁ。

それにしても、休憩時間(幕間)は30分ほどなので、トイレに行く時間も必要だし、結構食べるのに忙しかったです。
初めてなものだから、「もう食べていいのかな?」なんて、周りをキョロキョロ見回したりするのに時間がかかったせいもあるので、次の機会には、幕が降りたら時間を無駄にせずに、すぐ弁当を広げることにします(笑)

ちなみに、食べた後のお弁当のゴミは、劇場側が幕間にロビーにゴミ捨ての大袋を出してくれるので、そこに捨てられます。
劇場内で買った弁当ではなくても、捨てさせてもらえるので心配無用。

そんなこんなで、3時間以上の時間も長くは感じずに楽しめました。


江戸文化に浸った一日。
しかし公演が終わっても、まだ16時前だったので、喫茶店でお茶でも飲もうとしたのですが、館内の喫茶スペースはもとより周囲の店はどこも満員行列。
歌舞伎座内の各お土産売り場も芋洗い状態の大混雑で、とても買い物を楽しむ気になりません。
観劇の余韻をゆっくり味わう場が見つからなかったことが残念。
(銀座三越に戻って、ぶらぶら買い物はしましたが)
コロナ禍にあって、銀座に限らず休日に都心に出ることは、ここ3年ほど避けてきましたが、世間の人出はほぼ戻ったのかな?
まぁ、仕方ないですね。

優雅な観劇気分のまま一日を終わらせるため、このあとは銀座で夕食を食べてから帰宅することにしました。



 

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