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竹葉亭 銀座店@銀座四丁目〜立地最高!予約のできない老舗鰻料理店

銀座の歌舞伎座で、午前の部の歌舞伎公演を観劇した帰りがけ。
銀座三越で買物をして時間を潰したけれども、まだ時刻は中途半端な17時前。
喫茶店で一休みしたかったけど、どこも行列ができるほどの満席状態で、入る気にもならず。
確かにコロナ自粛は明けたけど、銀座って、いつもこんなに混んでるの?

さて、この後どうしたものかと迷いましたが、銀座まで来て歌舞伎を観て、優雅な良い気分のままで一日を終わらせるたいのなら、やっぱり銀座で美味い夕食を食べて帰るべきなのでしょう。
それが大人の正しい「銀ブラ」の行動様式ってぇもんです。(いゃ、知らんけど)

お江戸情緒に浸ってきたばかりなので、気分的には寿司か鰻か天麩羅あたりを食べたいところ。
しかし、銀座なんて日本一地価の高い街は私のホームグラウンドではありませんし、ランチならともかく、夜メシで、料金がリーズナブルで、しかも予約無しですぐに入れる料理店、特に寿司屋なんて知りやしません。(そもそも存在するのか?)

まぁ、寿司は無理として、その他の候補は事前に幾つかピックアップしてあります。

気温はまだ高いし、この人混みの中、遠くまで歩きたくもないので、三越のある銀座四丁目交差点に近いところから、順に候補を廻ってみることにしました。

まず向かったのは、交差点の角のGINZA PLACEのすぐ南側、銀座のど真ん中の超一等地にある
「竹葉亭 銀座店」さん。

こちらは小さいながらも、ビル一棟まるごと店舗にしている老舗の鰻料理店
事前リサーチによると予約はできない店のようで、ランチどきには早い者順に整理券を配布して行列を捌いているらしい。
予約不可の店なら、夜飯にしては早い、開店早々の時間に行けば、すんなり席に着けるかもと期待して向かいました。


🌀アクセス

いや、もうアクセスもなにも、お店があるのは地下鉄銀座駅の真上、銀座四丁目交差点の角からすぐのところ。
銀座プレイスの隣ですので、A5の出口から上がれば目の前にあります。
自家用で行くような場所ではないので、どうしても車で行くなら、運転手付きの車か、タクシーで行ってください。


🌀外観と店内の様子

外観は、薄墨を塗ったような暗くシックな色調のシンプルなの建物で、「竹葉亭」とある控えめな看板に、扉の横には「うなぎ」とだけ書かれた木の板一枚。
一等地にあるのに、あまり目立たない店構えです。今さら看板なんぞで目立たせる必要はないとの、老舗の自信の表れでしょうか。

店の前に立つと、暖簾はかかっているけど、まだ行列はなし。
扉を開けると、すぐに出てきてくれた男性フロアスタッフに、空席はあるかと訊ねたところ、2階の畳の席と、地下のテーブル席ならすぐ案内できるとの嬉しい回答。

事前調査によると、上の写真にも写っている、二階の窓側の小上がり席が、銀座四丁目の交差点を見下ろすことができて景色が良いとのことだったので、その席は空いているかと聞いてみると、流石にその席はもう埋まっているとのこと。
それなら、テーブル席の方が座り易いので、地下の席に案内してもらいました。

行列に並ばずに済む店を探し、何軒か歩く覚悟をしていたので、最初の一軒ですぐ席につけて、何にせよラッキーでした(喜)

階段を地下一階へと降りると、今度は女性のスタッフが2名いて、席へと誘導してくれました。

こちらは、夜の宴会にでも使うスペースのようで、5〜6組分のテーブルが並んでいます。
明治時代の創業で、100年を越える歴史を持つ老舗鰻料理屋の銀座店にしては、それらしい情緒を感じない、やや殺風景な席。
上の階の席は、もう少し風情があるようですけど。

しかし、席の間隔は適度に取られているし、終始満席にはならない程度の混み具合。フロアスタッフも近くに控えてくれていて、さらにトイレもフロア内にあるし、不衛生な感じもしない….
予約無しで飛び込んだ店としては、十分合格点をつけられる居心地の店内です。

先客が1組に後客が2組でしたが、客層は実に銀座の飲食店というイメージのとおりで、学生のような若い客はおらず、いかにも銀座でのショッピングを楽しんだ帰りらしい女性の二人組に、生活に余裕のありそうな身なりの良い老夫婦、それに所謂お店の若い子とその常連客のオジサンと見受けられる二人といった組み合わせ。
みんな騒がしくなく、静かに食事をしてくれているので何の不満もありませんし、地域性を如実に感じられて面白かった(笑)

🌀メニューと料理

メニューを見ると、鰻料理店ですから、まずはうなぎ丼や、うなぎお重ですよね。
うな丼、鰻重のような、一般的な呼び方で書かないところは、この店の伝統なのかな。
肝吸い別でこの値段は安くはないけど、銀座の真ん中という立地を考えると評価すべきか?
まぁ、料理の内容次第ですね。

それと鰻屋なのに、ここの店では鯛茶漬け鮪茶漬けが人気メニューなんだとか。同じ川魚の鯉の洗いなんかはよくあるけど、海の魚の、それも丼とジャンルが被りそうなお茶漬けとはねぇ。
築地が近いせいなのかな。魚好きとしては、ちょっと心惹かれますけど。

一品料理もそこそこ種類があるので、軽く飲むのにもよさそう。

ガッツリ、うなぎのコース料理で攻めるのもありでしょう。
おっ、天ぷら定食もあるぞ。

ちょっと気になるのは、メニューの端に書かれた、「うなぎに小骨がございますので・・・」の但し書き。
口が肥えていて、クレームばかり言う客が多いのか、そもそも店側も、鰻の捌きに自信がないのか? どっちだ??

まぁともかく、注文したのは・・・

車移動ではない日のお出かけで、且つ、こんな暑い日の夕方ですから、まずはビールになります(喜)

そして、鰻重を頼むつもりなので、気になるお茶漬けまでは食べ切れないけど、どんなものかと気になって仕方がないので、おつまみ代わりに
ご飯抜きの「鯛茶の鯛」(1,870円)を注文。

小さな擂り鉢で胡麻を摺り、薬味とともに投入、混ぜ合わせます。

すると成る程、ゴマやら薬味やらの風味が加わって、これならご飯に合うはずですし、酒のあてにも好適。
伊予の松山で食べた鯛茶漬けと同じようなレシピですね。

鯛はコリコリとした食感で、鮮度の良さを感じます。
私は白身なら、もう少し熟成させて、旨味をだした刺し身の方が好きなので、この料理を食べるだけのために、わざわざ銀座まで来ることはないでしょう。
でも、そもそも魚の刺し身は大好物ですから、この店に来たら、また注文してしまいそうなお味です。
ボリューム的には、そんなに多くはありません。

池波正太郎の随筆を読むと、この竹葉亭も贔屓の店の一つだったようで、食の細くなってきた晩年は、ちょいと何かつまみを頼んでビールを1本、白焼だか蒲焼が焼けたらお銚子をさらに1つ、最後に鯛茶漬けを食べて〆るくらいが、ちょうどよい分量だったそうな。
まぁ、その日常のささやかな(池波氏の収入から推察すれば)幸福を愛する気持ち、わかりますよね(笑)

私の方は、ビールで喉が潤った頃合いに「うなぎのお重」(4.180円)きも吸い(330円)がやってきました。

お重は、店名のはいった綺麗で立派なもの。

蓋を開けてみると・・・

特上や並、松や竹などのランク分けがない、一択の鰻重なのですが、お重いっぱいに蒲焼が載っていて、満足感が高いビジュアル。
これは「鰻重を食べるならケチケチしないで、これくらいの蒲焼は食べるものだよ」との、店側からのメッセージなのでしょう。

お重に入りきれなくて、蒲焼が少し重なっているところなんか、絶妙に幸福感を煽り上げてきます!(喜)

鰻の身もシッカリと厚め。

食べてみると食感は柔らかく、タレはクドくもなく、万人受けしそうな食べやすく焼かれた鰻の味わいでした。美味いです。
銀座の真ん中で、これだけの鰻重を食べさせてくれるなら、やはり今どきとしては、リーズナブルな価格設定じゃないでしょうか。

・・・と、満足しつつ食べ進めたのですが・・・
最後の方になるとメニュー横の注意書きの通り、残念ながら小骨が、ほんの少しではありますが気になりました。
・・・そうか、これはきっと、身が厚い鰻を使ってくれるのは良いが、火力の強い炭火で焼いていないため、小骨が焼ききれずに残ってしまうのではないのかな?
焦がす必要まではないけれど、もう少し香ばしさを出してほしい気もするし….。
街のイメージってものがあるので、銀座四丁目の交差点から、備長炭で鰻を焼いた煙を、もくもくあげ続けるのは難しいとは思います。いい匂いだけどね(笑)
(ネットで検索しても情報はないので、炭火で焼いているか否かは未確認ですので、ただの印象です)

北大路魯山人「春夏秋冬 料理王国」という本の中でも、この竹葉亭のことがふれられていて、「鰻屋としての一流の店」として挙げた3店のうちの一つとされた程の店なのですが、魯山人が褒めたのは、きっと昭和の、それも戦前の時代の頃のことだったろうしなぁ….。ひょっとして何か神業的なものが伝統として残っていて、鰻の味の認識を覆されるような鰻重を食べられるかもしれないと、ちょっとだけ夢想しましたが、そこまでは流石に期待しすぎだったようです。
でも、そもそも鰻の焼き方なんて、人により好みもあるだろうし、本来は旬ではない夏の鰻の味に、過大な期待をするもんじゃないのかもしれません。

お店の方の応対は、下町のチャキチャキな感じではなく、銀座らしく過不足なく丁寧なんだけど、高級料亭の熟練の接客というほどではない。
鰻の味は十分美味しくて、銀座という立地とその料理内容を考えると、リーズナブルで満足できる水準だが、魯山人が書いたように、東京の鰻屋の中でも絶品の部類か?と聞かれると、もっと美味い鰻の店はある。
だけど、銀座で食事をことがあるのなら、覚えておいて損はない。
そんなお店でしょうか。

銀座で食事をする機会は、今後もそう多くはないでしょうが、
「まぁ、いいや。時間も早いし、そこの竹葉亭で鰻でも食べて帰るかぁ」
なんて、軽く言えるような身分でいたいものです。


【竹葉亭 銀座店】
■所在地    東京都中央区銀座5-8-3
■最寄駅    地下鉄 銀座駅 下車1分 A5出口
■営業時間   11:30~14:30 16:30~20:00
■定休日    第1・3月曜日
■駐車場    なし
※予約不可