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吉川醸造「雨降」@伊勢原市〜大山山麓・日本酒の方のAFURI

家族の記念日に、鶴巻温泉の老舗温泉旅館「元湯 陣屋」に宿泊してきたわけですが、元々の計画では、行きか帰りに、宿からも近い、関東総鎮守の霊山・大山阿夫利(おおやまあふり)神社にお参りしてくる予定でいました。

大山阿夫利神社は、2200年前の創建と伝わる古社で、阿夫利(あふり)とは、大山が海から送られてくる湿った風にあたることで、雨雲が湧いて霞んでいることが多いことから、古来より「雨降り山」とも呼ばれていたことを由来としています。
山の神水の神酒の神、雷の神として火災避けや盗難除け、また雨乞いの神として祀られてきました。

江戸時代には、庶民の行楽を兼ねた参拝が流行し、年間20万人もの江戸庶民が訪れたとか。謂わゆる「大山詣り」ですね。

今は麓の駐車場まで車で行き、高尾山のようにケーブルカーで登ることができます。登った先の社殿前からは、相模湾に浮かぶ江ノ島をはじめとした大パノラマを一望でき、また山麓に降りれば、名物の大山豆腐猪鍋を提供する食事処が並ぶという、実に魅力的な行楽スポットなのです。

しかし訪れた日は雪混じりの雨空で、ひどく寒い一日。
ケーブルカーで上がっても、見晴らしはないだろうし、麓よりさらに寒いはずなので、行ったところで風邪でもひくのが関の山。残念ですが、大山詣では諦めたのでした(哀)

山の方を見ると、なるほど確かに雨雲が湧いて、雨降り山の様相

これはこれで良いもの見れたかなと、無理に納得(泣)


それでは、代わりに山麓で、有難い大山の神様の恵みをいただいていこうと、頭を切り替えました。

神奈川県の酒造組合蔵元マップを見ると、ほぼ、丹沢・大山山地の麓を囲むように日本酒の蔵元が点在していることがわかります。


丹沢山塊からの豊富な伏流水を使っている酒蔵なのでしょう。まさに山の恵みです。大山阿夫利神社が、古来お酒の神様であるだけのことはあります。

そんな山麓の酒蔵の中から、まず向かったのは、宿からも近い伊勢原市内の吉川酒造

図上の⑥番の場所で、丹沢大山からの伏流水を使った、銘酒「雨降(AFURI)」を醸している蔵元です。

泊まった旅館、湯元陣屋の夕食の席でも注文できたのですが、ちょっと高くて断念したので、蔵元の直売所に行って直接買って帰ろうって魂胆です。


宿を出て、カーナビの指示にしたがって国道246号から細い道に入り込み、クネクネと細い道を進むと、酒蔵の前に、数台停められる来客用駐車場が用意されていました。

目の前には、高い煙突が聳え立つ、いかにも酒蔵といった景観。

煙突には、「菊勇」と書かれていますが、「雨降」の幟旗もあるので、ここで間違いないはずです。

この「雨降(AFURI)」の文字は、由来である、大山阿夫利神社の神官に揮毫してもらったものだそうです。
いわば、お酒の神様からのお墨付き(笑)

直売所はどこなのか分かりずらかったのですが、一番手前、右手側の建物の中にありました。

吉川醸造さんは、大正元年の創業なので、この地で100年以上の歴史を持つ酒蔵。
敷地内の井戸から汲み上げた、大山から湧き出す硬度の高い伏流水を使用し、低精白の酒米でも雑味が少ない酒造りを追求している醸造所です。どちらかと言えば、庶民派の酒蔵なのかな。

一般的に日本酒は、硬水より軟水の方が醸造しやすいとされていますが、先日行った埼玉県の帝松さんだって、硬水を使ってバランスの良い吟醸酒を仕上げていたので、きっと困難ってことはないのでしょう。

店内の陳列を見ると、元々は、「菊勇」のブランド名のみで販売していたようです。しかし、バブルの崩壊後の日本酒需要の減退期以降に経営不振となり、東京の会社に買収してもらって生き延びることができたそうです。随分、ご苦労なさっているようです。
その後、大山阿夫利神社や大山の古名である雨降山にあやかって、「雨降(アフリ)」ブランドの酒もラインナップに加えたとのこと。

営業努力なのでしょう、「雨降」ブランドで、フランスの日本酒コンクールに出品し、受賞もしているようです。

店内の冷蔵ケースの中には、洒落たデザインの瓶に詰められたお酒が8種類。

上の段には、珍しい酵母を使った桜色のお酒や、にごり酒など、華やかさのあるお酒。

下の段には、純米山廃仕込み、生酛純米、純米大吟醸といった、いかにも酒好きが好みそうな酒が並んでいました。

それぞれ、コンクールで受賞したものも含まれています。

都内の酒屋では、あまり扱っていない銘柄ですし、折角、直売所まで来たのですから、ここは自分が美味と感じるであろう酒を慎重に選びたいところ。
冷酒として飲むなら純米吟醸が好きですし、燗をした純米酒も悪くない。悩みますね。

フランスの日本酒コンクールで賞を取った酒というのも、一応気にはなります。
まぁ、でも、日本酒の海外販売を後押しする意味でのコンクールに意義はあると思いますし、その努力に敬意を払いはしますが、そもそもフランス人なんぞに、本当に日本酒の良さがわかるのかいな?との疑問は拭えないので、メダルはあまり気にせずに、自分が飲みたいと思う酒を探すことにしました。
(いや、随分前のテレビ番組で、パリの高級レストランに吟醸酒を売り込みに行った日本の蔵元が、料理人だかソムリエから上から目線でダメ出しされるは、客からオレンジジュース(!)で割って飲まれるは、全くひどい扱いを受けていたのが記憶に焼き付いてしまっていて、それ以来、あいつら、ただの高慢チキの味音痴なんだと認識しているもので・・・)

楽しく悩んだのち、選んだのは、こちらの「雨降 純米大吟醸 雄町」(3,150円)

岡山県産の酒造米、雄町を50%まで磨いて醸したお酒です。

左隣にあった、山田錦をつかった純米大吟醸酒にも心惹かれましたが、さすがに4号瓶で一万円の酒は高すぎます。
高くても、三千円台位の値段で、「旨い!」と唸るような酒を造ってくれないと、私の懐具合的に困るのです(笑)

飲んでみると、サラリとした吟醸香のあとに、ガッとくる強めのアルコール感。
でもラベルを見ると、アルコール度は16度だから、普通やや高め程度か。

私の喉には、穏やかとは言えない口当たりながら、甘くもなく辛くもなく、薄味の料理との相性も良さそう。
白身魚とか貝類の刺身にも合いそうなので、今度買ってこよう♪
温燗でもいけそうだけど、香りは残るかな?
同じ備前雄町の純米大吟醸でも、この前買った、埼玉県の帝松のものとは、味わいが全く異なります。こんな風な飲み比べや、その酒に合う肴選びが出来る楽しさが、日本酒(と日本の食材)にはあると思うのです。
この辺りの話は、ひょっとしたら、イタリアやスペインの沿岸部の人達には理解してもらえるかもしれないけど、パリの人間には無理だったね。くどいか?(笑)


ところで、吉川酒造さんは「AFURI」の商号をめぐって、ラーメンチェーンの「AFURI」さんに裁判をおこされたり、ネット上で騒ぎになったりしています。
あちらのラーメン店も、一号店であり本店となっている厚木市内のZUND-BARが、わざわざ丹沢山地の麓の僻地に、水の良さを見込んで出店した、随分と冒険的なお店です。
応援したい気持ちは湧いてくるのですが、そもそも古来からの山名であり、由緒ある神社の名前を借りているのだから、法的にはどうあれ、それを独占しようとするなら、反感を買っても仕方がないんじゃないかな。大体、ラーメン屋の名前と同じだからって、日本酒を選ぶ酒好きなんているのかね?と、思います。
一方の吉川醸造も、「雨降」銘が創業時からのブランドではない点が弱いところかな。
でも、神様だって、間に立たされて争われたんじゃ困るでしょうから、良い落とし所を見つけて、一緒になって大山阿夫利ブランドの向上を図れるようになれば良いのにね。揉め事なんて聞いていたくもない一消費者としては、そう思うのです。


【吉川醸造】
■所在地  神奈川県伊勢原市神戸681
■営業時間 月〜土 8:30~12:00 13:00~16:30
■定休日  日曜・祝日・年末年始・夏季等
■駐車場  有



 

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