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手打そば『車家』@八王子市越野〜一茶庵系の多摩の名店


南多摩エリアにあって、蕎麦の名店との評価がすこぶる高い「手打そは 車家」さん。
昭和47年の創業で、初代の小川修氏は「蕎聖」と呼ばれた伝説的蕎麦打ち名人である片倉康雄氏の元で修行した、いわゆる一茶庵系お蕎麦屋さんです。


随分昔から、あそこは良い店だとの噂話を聞いてはいたのですが、実は未訪問。
だってお値段が高めだし、人気があるのでいつも混んでいるし、土日は予約もできないし、・・・なんてことを聞いてしまうと、なかなか足が向かなかったのです。
でも、いつまでもそんなことを言っていたら、名店の誉高い蕎麦屋の蕎麦を、食べずに一生を終えてしまいそう(笑)
我が家の記念日に、意を決して行って参りました。

🌀アクセス

車家さんの所在地は、八王子市越野
多摩ニュータウン内にあって、幅の広い4車線道路の野猿街道沿いにあります。

で行くなら下柚木交番前交差点が目印で、その少し東側。中央分離帯がある道路なので、下り車線側を走ってきたら、交差点でくるっとUターンする必要があります。

駐車場は16台分ありますが、混雑時には満車になり、路上にまで空き待ちの車があふれるそうです。

最寄駅京王相模原線堀之内駅。駅から歩くと25分ほどかかるので、ちょっと遠い。だけど、駅前からバスに乗って、帝京中高校前で降りると、2分ほど歩くだけで済みます。


🌀外観と店内の様子

お店の外観は、これはもう正真正銘、歴史を感じる本物の重厚な古民家で、素晴らしい風情があります。福島県の会津・只見で、間もなくダムに沈もうとしていた築130年の古民家を移築してきたものだそうです。グッジョブ!

この日は開店時間を目指してくるつもりが、準備が遅れて出遅れてしまいました。仕方がないので、昼のピークを外して13時半頃に到着したのですが、幸い駐車場には3台分程の空きがあり、スムーズに駐車することができました。

入口の前まで来ても、外待ち行列はなし(喜)

暖簾をくぐると、流石に中には空席待ちのお客さんがいましたが、それも二人連れが1組のみ。

レジ横に席待ち表がおいてありましたが、自分では書かずに店員さんに申告して書いてもらうシステム。テーブル席が良いか、畳の座卓席でも良いか確認されたのですが、早く食べたかったので、どちらでも早い方でとお願いしました。

記帳した後、椅子が数人分置かれた狭い土間スペースで待つのですか、見ると暖を取れるよう火鉢が据えられ、中には炭火が起きていました。
おぉ、これは昔の田舎家っぽくて、実に良い風情だ!素晴らしい!!

さて、先客は入れ替わるように中に案内されていき、我々も5分と待たずに席につけました。このような雰囲気の中で、このくらいの時間ですむのなら、待つことも全く苦になりません。

靴を脱いで座敷に上がり通されたのは、大きめのテーブル席が並ぶ板張りの広間の・・・・

・・・・さらに奥の畳の間。

六人分の座布団が置かれた座卓が、四つ配置されています。
床の間があり、少しだけ開けられた障子の間から、広くはない庭がチラッと見える、これもなかなか和の風情が溢れる空間。
しかし、久しぶりに畳の床に座ってみると、まだまだ平気だと思っていたのに足腰が痛くなってきてしまいました。しかも立ちあがろうとするとジタバタと見苦しい動きを晒してしまって、我ながら実に醜悪な姿。次からは見栄を張らずに、テーブルを案内してもらうようお願いすることにします(泣)

手前の天井の高い板の間の調度類を見ると、椅子はこれ松本民芸家具かな?座り心地が良さそう。

こちらの分厚い一枚板のダイニングテーブルも、趣があって素敵。

建物も見事な本物の古民家だし、店内の設に華美さこそないものの、ゆったりとした民芸調の和の美意識に包まれいて、何だか豊かな気分になります。
他にも、4人がけのテーブル席が並ぶ部屋が見えたし、個室もありそうですが、全体像はよくわかりません。


🌀メニューと料理

車屋さんに来るのは初めてですが、噂話程度は何度も聞かされています。
謂く、「蕎聖」友蕎子、片倉康夫氏直伝の一茶庵系の蕎麦屋ですから、更科そば変わり蕎麦をはじめとした細切りの手打ち蕎麦は絶品、食材へのこだわりも強く、鴨南蛮そばも名物。また甘味も美味い….とのこと。

メニューを見ると、4種類あるレギュラー蕎麦のうち、片倉友蕎子直伝の「さらしな」は、残念ながらお休み中(涙)
まぁ、良いでしょう。私もお店で蕎麦をメインに食べるなら、更科よりも挽きぐるみの田舎蕎麦のほうが好きですからね。車家スタンダードは蕎麦粉9割の「おせいろ」で、ほかに、やや苦味のある「ダッタンそば」と喉越しの良い「二八そば」があります。

丹波の大納言を炊き上げた自家製甘味もありますね。お汁粉ぜんざいはわかるけど、伊吹だんごってのは初耳です。

運ばれてきた緑茶をいただきながら、「最近じゃあ、2000円近くするラーメンも珍しくもなくなったとはいえ、やはりお高めだなぁ」とか、「蕎麦の大盛りはないのかぁ」とか、「甘味は注文するとしてして、メインはやっぱり天ぷらか鴨にするか」などと悩んでいると・・・・
いつもはいつまでも悩んでいる同行の妻殿から、「そばは「鴨せいろ」が食べたいが、「おかわりそば」で「ダッタンそば」も食べてみたい。それに聞いたことのない「伊吹だんご」も!」との早々のオーダーが入りました。

「えっと、それだとお勘定が結構な額いくなぁ….」と思いましたが、この日は家族の記念日です。思い切りよく、食べたいものを食べことにしました。

結果、注文したのは、私が「天せいろそば」(2,770円)

妻殿は「鴨せいろそば」(1,900円)

どちらも、お蕎麦はスタンダードな「おせいろ」とのセットです。

新潟県と茨城県の契約農家から仕入れた玄蕎麦を自家製粉したという手打ち蕎麦は、細切りで僅かに星が散ったもの。蕎麦つゆとの絡みが良さそうです。

あれっ? でも、名人直伝の名店の蕎麦にしては、蕎麦の繋がりが悪くて短くない??
偶々なのか、あるいはズズズッと喉越しよく啜りたいなりら、二八そばを注文しろってことなのかな?
まぁいいや、私は蕎麦は喉越しより風味重視派ですから。

小さめの徳利に気前よく口元まで満たされた蕎麦汁を、これまた小さめの蕎麦猪口に注ぎ、蕎麦を浸して食べてみると、こりゃあ美味い!(喜)


鰹節の出汁が効いて香りがよく、辛めなのに角の尖っていない汁が蕎麦に絡んでとても美味しい。蕎麦汁ってのは、このくらい鰹節が立っていなきゃねぇ。
蒸籠が小さく見えて蕎麦の量も少なめにみえたけど、そこそこボリュームがありました。蕎麦汁も蕎麦も、変に量をケチった感じがなくて好印象

天ぷらを見ると、海老は二本あるものの、ボリューム的には平凡で見栄えはないなと思いましたが・・・・

・・・海老天を食べてみると、海老そのものの味が濃厚で、これも美味い!
素材や鮮度が良いのか? 或いは下処理が良いのか、はたまた天ぷらの揚げ方に工夫があるのか?

野菜の天ぷらの方も、レンコンには粘り気や風味、茄子やブロッコリーには鮮烈な香りやジューシーさが、そのまま衣の中に閉じ込められていて、ちょっとビックリするくらい美味しい。平均的な蕎麦屋の天婦羅の域をはるかに超えたお味です。

これなら、完全予約制のコース料理にも期待ができそうです。でも平日のみなので、いつ機会をつくれるかな??

つづいて、ダッタンそばでお願いした「おかわりそば」(800円)が二人前。


おかわりそばには蕎麦汁がついていませんが、小さめの徳利ながら口元まで、初めからたっぷり満たして持ってきてくれているので十分足ります。

北海道の契約農家さんのダッタン蕎麦の実を、専用の石臼で自家製粉しているというこだわりぶり。

確かに、今まで食べたことのある韃靼蕎麦よりも、ほのかな苦味に鮮烈さがあります。この苦味に血圧降下や美肌作用の効用があると知ると、なんだか得した気分です(笑)

こちらは、妻殿の鴨汁

しっかりした厚さと大きさの鴨肉が4枚入っていました。

一枚お裾分けして頂きました(喜)


ダッタンそばとともの頂きましたが、合う! 美味い!
しっとり柔らかで、臭みなど全くない国産鴨の風味がつゆとよく馴染んで、ダッタンそばの苦味に負けていませんね。妻殿は、添えられた山椒を少しかけると風味が増すと言ってたけど、必要性を感じなかったなぁ。

蕎麦湯は、少しだけ白濁したものでした。
汁が多めに残ったので、濃い目にして飲んでみたのですが、旨味はあるのに、見た目よりかえしに醤油の角がなくて不思議。美味しいです。

妻殿の鴨せいろ用には、蕎麦湯で割りやすいように別の蕎麦猪口を持ってきてくれました。鴨汁の満たされていた陶器も、よく見ると注ぎ口のある片口。このあたりの気配りには感心させられます。

さて、次は甘味となるのですが、ここまででかなり満腹となってしまいました。おかわり蕎麦は、一人前を2人でシェアするくらいで、私には十分な量でした。こだわりの強い蕎麦屋は、蕎麦のボリュームが少ないものだと用心し過ぎたようです。

それでも勿論、甘味は食べて帰ります。
私の注文したのは、「お志る粉」(700円)


器を見ただけで、もう美味しそう。

蓋を開けると、餅ではなく白玉入りで、汁はこし餡。

良くみると、蕎麦団子のようです。


この餡の甘味が控えめ且つ円やかで、とても美味しい。ガッツリ砂糖を感じる甘さも嫌いではないけれど、食事の後のデザートには、このくらいがちょうど良い。こし餡ですから、舌触りも滑らかで上品な味わいです。

こちらは妻殿の「伊吹だんご」(800円)

なんとなく、小さめの団子が串にでも刺さっているのかと予想していたけど、大きめの饅頭がボテっと。
きな粉がパラパラっと粉雪のように振りかけられています。

中を割ってみると、餡子を蕎麦がきで包んで、きな粉を塗す構成。お蕎麦屋さんならではの甘味ですね。

へぇ〜、これが伊吹だんごかぁ。でもなぜ、このだんごが「伊吹」なのかな?
元々は、蕎麦がきの部分が、滋賀の伊吹山名物のよもぎ餅だったものを、どこかの蕎麦屋さんがこのスタイルにして売り出したのでしょうね?色合いに華やかさはないけれど、お抹茶とともに味わってもよさそう。実際のお茶席では、みなさん着物を着ているでしょうから、きな粉ものは食べづらいでしょうけどね。


ごちそうさまです。
ボリュームの目算を誤ったようで、蕎麦屋でのランチなのに、かなりの満腹です。
お会計の方も、2人で8,000円オーバーになってしまいました。アハハ。

でも、今まで人から聞いてきた通り、美味しいお蕎麦屋さんでした。
「さらしなの生一本」がお休み中なのと、「おせいろ」の短さが気がかりですが、蕎麦打ち職人の人手不足なのかなぁ。全て自家製粉の手打ち蕎麦って、準備が大変だよねぇ。

お値段的には、おかわりそばを2人で一人前にして節約するとか、天せいろは突出して高いので諦めるなりすれば、そこそこリーズナブルなラインに近づくかな?。でも、天ぷら美味かったし、お志る粉もまた食べたいしなぁ(笑)
混み具合も、席数が思いの外多かったので、ピークの時期や時間帯を外せば、ラーメン屋の行列のように並ぶことはないんじゃないかな?
駐車場に車を入れられないほど混んでいたら、諦めて少し先の「だるま家」で、鰻か寿司を食べて帰る手もあるでしょう。

次は山菜の時期に来たいなぁ。ここの山菜天婦羅はきっと美味いだろうなぁ。
コース料理も食べてみたいし、できたら常連になるくらい通いたいなぁ。


食後は、腹ごなしに車で10分程の鑓水(やりみず)絹の道資料館へ。

一度行ってみたかっんです。

幕末から明治時代にかけて、上州や信州の養蚕地帯で生産された生糸を、一旦八王子に集積したのち、横浜港まで運ぶルートとなっていたのが遣水峠を通る絹の道。ここを拠点とした生糸商人達が活躍し、三菱財閥の岩崎家と婚姻関係を結ぶ程の豪商も生まれました。しかし、どの豪商たちも、大正期には時代の流れにのまれるままに没落してしまいました。つわものどもが夢のあと。
資料館は、石垣大尽と呼ばれた八木家の邸宅跡に建てられたもので、往時の雰囲気を感じることができます。

昔はこんな風情だったようです。道路は舗装されたけど、今もたいして変わらないかな。

歴史好きなら、ついでに是非どうぞ。


【手打そば 車家】
■所在地   八王子市越野3-10
■営業時間  11:00 ~ 15:00 (Lo.14:30)  17:00 ~ 20:30(Lo.20:00)
■定休日   毎水曜日・第三木曜日 毎週火曜日は半休(15時閉店)
■最寄駅   京王相模原線 堀之内駅下車 徒歩25分
■駐車場   有り



 

 

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