「戸倉上山田温泉」は、善光寺がある長野市の南隣りにある千曲市内、千曲川の畔に湧く湯量豊富な温泉地。
泉質はアルカリ性単純硫黄泉で美肌の湯として人気だとか。
笹屋ホテルさんは、明治時代にその戸倉上山田温泉の開湯に貢献した老舗旅館。
自家源泉からの掛け流しの湯が自慢と聞いていたので、一度泊まってみたいと思っていました。
笹屋ホテルさんでは、レギュラータイプの客室にも源泉がひかれていて、十分高級感があるのですが、
今回予約したのは、敷地の一角に建てられた日本建築の別館、『豊年虫(ほうねんむし)』。
「豊年虫」とはカゲロウのことで、笹屋ホテルに滞在中の志賀直哉が執筆した短編小説のタイトルから名付けたそうです。
旧帝国ホテルを手掛けたことでも有名な、建築家フランク・ロイド・ライトの日本人最初の弟子、遠藤新の設計による昭和初期の建築物で、
国の登録有形文化財となっています。
八つある客室からは、それぞれ綺麗に整えられた庭が眺められ、趣の異なる自家源泉の注がれた内湯が用意されています。
この日、通された部屋は「菖蒲(あやめ)」。
大きな床の間のある本間に続いて、
ゆったりとした広縁からは・・・
池の周りに千曲川で採取したという庭石を配した、見事な庭園が眺められ・・・
昔ながらの木枠のガラス戸を開けると広い濡れ縁に出られます。
建物や植栽の配置が良いせいでしょう。
濡れ縁に出ても他の部屋の気配を感じないので、この部屋専用の庭のように感じられます。
眼下の池には錦鯉。
個人の家では、水質の管理やら湿気やらの関係で、憧れはあっても母屋の近くにこんな池を設けることは難しいですよね。これは贅沢な眺め。
早めにチェックインするなり連泊するなりして、季節ごとに景色を変えるであろう庭を眺めながらこの広縁で読書でもして過ごせたら、きっと満ち足りた気分に浸れるでしょう。
庭とともに豊年虫のもう一つの自慢、部屋付きの浴室は、この床暖房のはいった洗面室の向こう。
豊年虫の部屋の中では小振りな浴槽ですが、
蛇口を捻ると、自家源泉からの熱めのお湯がジャバジャバと注がれます。
ややヌルッとした温泉に何時でも浸かれるのですから、これも贅沢。
浴後に涼むのも、坪庭を見ながらどうぞとの心配り。
豊年虫に泊まっていれば、部屋の外にでる用事もないのですが、カウンターバーもあるので・・・
館内散歩がてら、夕食前に軽く一杯というのもいいでしょう。
夕食は部屋食。
まずは、季節の先付け。
お椀は鯛進丈。
お造りは、信州サーモン・鯉・岩魚の刺身。
信州サーモンが出回るようになって、海のない長野県でも地場産の彩りの良い三点盛りを揃えられるようになりましたね。
続いて信州牛のすき焼き。
何故か?オマール海老のサラダ。
名物料理らしい豊年蒸し。
岩魚の西京焼きを信州産コシヒカリで。
デザートの頃にはもう満腹。
地場の食材が味わえる夕食で満足できました。
朝食も部屋食で、和洋折衷なこんな感じ。
食後は、チェックアウトまで温泉に浸かったりしながら過ごしました。
館内は絵になる景色がいろいろ。
お安いホテルではありませんが、ちょっと頑張れば手の届く贅沢。
そのぶん、館内も静かで落ち着いてますし。
また、今度は紅葉の最盛期にでも訪れてみたい と思います。
【笹屋ホテル 豊年虫(ほうねんむし)】
▪️所在地 長野県千曲市戸倉温泉3055
▪️Site http://www.sasaya.co.jp/