西武新宿線の武蔵関駅。
急行も停まらないし大きなショッピングセンターがあるわけでもないので、今まで一度も降りたことのなかった駅です。
しかしここの駅前に、数年前に「チューボーですよ!」というテレビ番組で、ハンバーグの「街の巨匠」の店として紹介されたことのある洋食店があるというので、早めの夕食をとりに降り立ってみました。
目指したのは、南口側の駅前商店街にある洋食『三浦亭」さん。
最寄り駅は、上石神井駅の西隣にある西武新宿線 武蔵関駅。
店の所在地としては、練馬区関町北2丁目になります。
今までなんとなく武蔵関駅までは多摩地区なのかと思っていたのですが、ここはもうギリギリ都区内なんですね。
南口側に降りてみると車が行き交うような駅前大通りも見当たらず、ただ昔ながらの商店街が西へ向かって伸びています。
ところどころに興味をひかれるような飲食店がある、今どきにしては意外に賑わっているこの商店街を西へ8分ほど歩くと「三浦亭」さんにたどり着きます。
店専用の駐車場はないようです。
周辺の道路は一方通行が多く、停めやすそうな広いコインパーキングも見当たらないので、西武線や他の公共交通機関を利用して訪問するのが良さそうな立地です。
四つ角に建つ、3階建てのビルの一階に店はありました。
間口に大きなガラスが嵌め込んであって、混雑具合など中の様子を覗きやすくなっています。。
ただ、ショーケースがあるでもなく、外観はシンプルと言うかむしろ殺風景。
内装や雰囲気ではなく、料理の味だけで勝負しようとしているようです。
店内には、カウンター席が六つあるばかりの小さなお店です。
開店間もない18時前の到着で、外から覗くと先客は地元マダムらしき一組のみ。
中に入って「予約なしの一人」である旨を告げると、他に予約も入ってなかったようで無事席に着くことができました。
その後、食事中に予約の電話が何本か入って来ていたので、訪問する時間帯や人数によっては事前に予約しておいた方が無難でしょう。
店は如何にも職人然とした、シルバーグレイのシェフが一人で切り盛りしています。
厨房は広くはないけれど、どこも綺麗に磨かれて、使い勝手良さそうに並んだ寸胴や片手鍋からシェフのこだわりや熟練度がうかがい知れます。
メニューを見ると、ハンバーグやポークソテー、ビーフシチューに牛ヒレ肉のステーキなどが並んでいて、特に目新しさはありません。
しかし、洋食がまだ珍しいハイカラなご馳走だった頃からの、変わることのない王道的ラインナップだとも言えるでしょう。
パスタやカレーなど喫茶店の軽食的なメニューもありますが、価格設定は1000円前後とそれほど軽いとは言えません。
かえってどんなものなのか?興味が湧いてきますけど。
中でもオムライスはかなりの人気料理だそうです。
日替わり(?)の「本日のおすすめ」メニューなんてのも用意してくれているので、何度通ってもこの店の料理に“飽きる”なんてことはなさそうですね。
さてこの日は初訪問でしたので、まずはテレビでも紹介されていたハンバーグを食べてみたいところ。
注文したのは「グリエールチーズハンバーグ」(950円)に追加のライス。
シェフがパンパンと挽き肉を叩く音を聞いたり、目の前で熟れた動作で火を入れたり装ったりしている姿をぼんやり眺めているうちにサーブされました。
ハンバーグの横には、派手さはないけれどクリームソースで味付けされた温野菜が添えられています。
ジューシーなソースがたっぷり掛けられた外観には食欲をそそらされますねぇ。
上に載っているトロけた「グリエールチーズ」は、癖は弱いけれどコクがあり、料理に使うのに適した熟成チーズ。
チーズフォンデュによく使われるチーズですね。
ふっくら丸まったハンバーグにナイフを入れると、中の挽肉にはほんのり赤みが残っていてジューシー。
でも無駄に肉汁が溢れてしまうようなことはありません。
意外と確りした塊感があって、肉の食味を感じるハンバーグです。
ハンバーグの肉肉とした食味に、トロけたグリエールチーズとデミグラソースの旨味が絡まって美味い。
ご飯もすすみます。
このジューシーさからすると、フライパンで外側に焼き目をつけてからオーブンで火を入れたのかな?
それともフライパンだけで仕上げてたかな?
興味が湧いてくるところですが、折角目の前で調理してくれていたのに、ボンヤリしていて見損ねてしまいました。
これは失敗。
次来たらよく見て確認しておくとしましょう。
(見た所で自宅で再現できるものではありませんが)
しかし、この確りと丁寧に調理されたハンバーグがこの値段なんですから、これはお得感があります。
そりゃあ人気もでるでしょう。
シェフは基本的には調理に専念していたいようで、無口な方のように見受けられるのですが、受け答えには洋食屋の親爺さんと言うよりは高級レストランのシェフのような折り目正しさを感じます。
見ていないようでスッと振り返って、サッと空いたグラスに水を注いでくれたりして居心地は悪くありません。
ワイワイガヤガヤと皆んなで飯をかっ喰らうような店ではありませんが、静かに食事に専念できて、個人的には好きな雰囲気のお店かな。
料理人のあり方や食事のあり方などについては、やはりかなりの拘持っておられるようで、それをわかってくれそうな先客の常連らしきマダムとは、ポツリポツリと思いを語っておられました。
いゃ、私はそれほど難しい思想は持っていないし受け答えもできないので、ひたすら無口にハンバーグを食べ、味と外観を舌と写真に焼き付けさせてもらいました(笑)
ここのハンバーグは決して「高級」であるとか、「唯一無二」のものではありません。
でも、客に出した時に一番美味しい状態になるように、理詰めで丁寧に調理された料理には「なるほどねぇ」と感じる美味しさがあります。
(熱々の鉄板に載って、火の入り具合の変化を楽しめるレアなハンバーグも嫌いじゃないんですけどね)
ここの料理の味が、「美味い」と言って良い洋食の一つのベンチマークになりそうです。
ビーフシチューとかポークソテーとか、他のメニューも食べてみたくなりましたよ。
食事を終え駅に向かう商店街の途中には、雰囲気のよさげな喫茶店があったりします。
チェーン店ではない個人営業の喫茶店なんて絶滅危惧種的に数が減ってるかと思ってたんですが、他に駅直近や北口側にもそれぞれ雰囲気の異なる喫茶店があって共存しています。
そんなに大きな町ではなさそうなんですけど、周辺に外食好きな人が多いんですかね?
武蔵関駅前には初めて降りてみたんですが、何だか「下宿」してみたら楽しく暮らせそうな面白い町なのでした。