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「武州下原刀展III」@福生市郷土資料室〜歴史ある貴重な多摩の郷土刀


安土桃山時代から江戸時代にかけて、現在の八王子市内で
「武州下原刀(したはらとう)」と呼ばれる刀剣が作刀され続けていたことをご存知でしょうか?

南関東を支配した小田原北条氏と、その滅亡後は徳川幕府の庇護を受け、八王子の恩方、横川、元八王子あたりに点在した山本性を名乗る刀工集団により「折れず曲がらずよく切れる」という実戦本位な刀剣が作り続けられていました。

その多摩が誇るべき郷土刀である「下原刀」の展示会があるというので、初日から早速見に行ってきました!


前回は平成22年に開催されたようですので、6年振りの展覧会になります。

会場は福生市中央図書館の一階に併設されている、福生市郷土資料室

JR青梅線牛浜駅からは徒歩で7分くらいです。

駐車場も20台分あるので、午前中の早い時間なら、車で行っても停めやすいでしょう。
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図書館の正面入り口から中に入ると、すぐ右の部屋が郷土資料室になっていました。
図書館は休館日でしたが、こちらはやってますね。
なんと、大変ありがたいことに入場無料です。
刀の管理や保存は大変でしょうに、えらいぞ!福生市!!

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武州下原鍛冶は、初代周重(ちかしげ)が関東管領上杉氏の家老格であった、滝山城の大石氏に招かれ下恩方で作刀したことから始まります。

その後、小田原北条氏が南から関東を制圧していくにつれ、大石氏は北条氏康の次男である氏照を養子として後を継がせることになりますが、下原鍛冶は引き続き北条氏の庇護を受けることになります。

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そして、北条氏康から康の字を賜った康重や、北条氏照から照の字を賜った照重など一門から名工を輩出し、下原鍛冶は最盛期には「下原十家」と呼ばれるほどの刀工集団となります。

小田原北条氏滅亡の際には一時甲斐国に逃れていた時期もあったようですが、実戦での使用に適した下原刀が評価されたのか、徳川家からも特権的な地位を認められ、幕府御用として再び八王子で幕末まで作刀を続けることになります。
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しかし幅広で折れずによく切れる下原刀は、実戦で使用されることが多かったためか、あるいは鑑賞の対象としてはあまり評価されなかったためか、歴史が長い割には現存数が少ないそうです。

さらに戦後になると、GHQは武器となる日本刀の接収を命じ、多くの刀剣類が集められ破却されてしまいます。
しかし接収された膨大な数の刀剣(いわゆる赤羽刀)のうち、銘がありその「刀匠の出身地でなら十分展示に値する」と判断された一部の刀は、その後、一般公開を条件に博物館や美術館に無償譲与されていきます。
それら赤羽刀のうち、福生市には幸いにも破却を免れた約40振りの武州下原刀が譲与され、保存されることになりました。

今回の展覧会は、亡くなった下原刀研究の第一人者の個人の所蔵品を中心に、福生市が所蔵する下原刀を加えての展示会となっています。

説明を読んでいると無骨な刀のイメージがある下原刀ですが、実際に見てみると刀身に「下原肌」と呼ばれる特徴的な渦巻模様が見えていたり、彫り物が施された刀や、槍や薙刀にも優美な曲線を持つ刀剣があったりして、意外と美しいものも多くて見応えがありました。

実用刀とはいえ雑兵が持つような刀ではなかったのでしょうから、下原刀もそれなりの気品を自ずから持っているということでなのか、あるいは収集家の美意識がこのコレクションに強く反映されているのかもしれません。

館内は撮影禁止ですので、購入したパンフレットから一振りだけ写真を載せておきます。
この刀なんかは、あまり無骨とまでは感じませんね。むしろ曲線が美しい。
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多摩の郷土刀として誇っても良い、歴史ある「武州下原刀」です。

江戸幕府開闢以来、永く続いた太平の世にあっても、この天領であった多摩の地で実戦用の刀剣が好まれ、製作され続けていたことにも何か感銘も覚えます。

地理的に考えれば、八王子千人同心も顧客であったでしょうし、徳川旗本衆からの注文も多かったはず。
敗れたとは言え、彼らは最後まで実戦を見据えた闘う武士集団であったのでしょう。

11月27日まで開催していますので、歴史好きな方でしたらこの機会に是非実物をご覧になってみてはいかがでしょうか。

なんてったって無料ですし(笑)



 

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