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工房 『時』@飯能市〜蔵造り古民家で蕎麦ガレット


入間川の中流域に位置する飯能市は、古くは名栗産の木材を江戸に運ぶための中継地として、また江戸時代後期以降は生糸の取引地としても賑わった町です。
そのため、今でもあちこに往時の土蔵造りの商家を見ることができ、なかなか趣深い街並みが随所に残っています。

駅から北西の方向へぷらぷらと散歩していて目に着いたのは、生糸問屋だった絹甚さん。

二階部分両側には、防火壁の役目を持つ「うだつ」があがってます。
「うだつが上がらない」の語源になったもので、かつての富や成功の証でもありました。
今では実物を見る機会もあまりありませんから、これは貴重。

現在、建物はは市により保存されていて、屋内も公開されています。

また、こちらは同じ道筋にある「銀河堂」と言う喫茶店。

素晴らしく風情があって興味をビシバシひかれるのですが、この日は古民家を再生したカフェで蕎麦ガレットなるものを食べるつもりだったのでそのまま通過。
ここはいずれまたの機会に。

これまた風情のある米屋さんが角にある広小路の交差点から、飯能高校へと抜ける飯高通りを北上。

途中、古久やと言う老舗手打うどん店がありましたが、日曜は定休日のようです。

そのさらに2軒ばかり北側に、それらしい蔵造りの建物が見えてきました。

ガレットと表示されているので間違い無いでしょう。

入り口はどこかと、建物北側の路地に回り込むとありました。
そば工房『時』さんです。


🌀アクセス

「そば工房 時」さんの所在地は、飯能市八幡町6-11。

最寄駅となる西武鉄道飯能駅からは歩いて10分弱、距離にして600m程になります。

店専用の駐車場はありません。
飯能駅周辺のコインパーキングにでも停めて、飯能の街を散歩してくるのが良いと思います。


🌀外観と店内の様子

元は商家だったのでしょうか?
店舗となっているのは、蔵造りの部分。

門をくぐり、引き戸を開けて建物内に入ると、元々の土蔵の重厚な扉が見えます。

扉前の壁に2枚イラストが掲げられていましたが、そのうちの右側の絵は、随分と昔のアニメ「The・かぽちゃワイン」の確かエルちゃん。
とても懐かしいのですが、ここの古民家の風情とは些かミスマッチ(笑)

蔵の中のフロアに入ると、席は鉤形カウンターに4つと、

小さなテーブル席が二つ、

それに6人掛けの大きなテーブル席が一つあるのみ。

外観から想像していたよりも、ずっとこじんまりとした店内です。

内装としては、白い漆喰の壁に「時」という店名にふさわしい古時計幾つも掛けられ、窓のない蔵造りの室内には天井から吊るされたやや暗めのアンティーク調の照明、椅子には少々ちぐはぐ感がありますが、全体としては本物の古民家の風情に溢れる実に渋い空間。

入店時には、予想していた以上に先客で賑わっていて、カウンター席にしか空きがありませんでした。

しかし店の人の姿は見えず、店の奥に向かって声を掛けても応答なし。
仕方がないので、カウンターに座って店の人が出てくるのを待つことにしました。

作り付けの棚に並ぶのは、秩父の誇り「イチローズモルト」。
こんなに成功してプレミアが付くのなら、もっと早くに買っとけば良かった。

このカウンター上のケースのナッツをツマミにウィスキーを飲むのかな?

しかし、待てど暮らせど店の人が出てきません。
先客の方もお会計にしたいようで声をかけているのですが、奥からの応答はなし。

数分後にやっと料理を持って出てきた初老のマスターに声をかけると、ちょっと吃驚した様子で、来店に気付かなかったことを申し訳なさそうにお詫びされていました。
どうやら店はワンオペのようで、マスターの耳も少々耳も遠くなってらっしゃるのかもしれません。
調理にかかっていると、フロアの様子が把握できないようです。
まぁ「時」が止まったようなお店ですので、御来店の際には時間と気持ちに余裕を持って、至極ゆっくりと過ごすつもりでいるのが良いのでしょう。


🌀メニューと料理

手作りイラストのメニューを見ると、蕎麦粉のガレットが1,200円から1,500円までの価格帯で各種揃っています。

ちなみにガレットとは、フランス北西部の郷土料理で、まぁ主に蕎麦粉を使ったクレープのことです。
そう言えば、門の前にも小さなフランス国旗が掲げられていましたね。

事前に調べた情報では、手打ち蕎麦もあるはずだったのですがメニューにはありません。
ワンオペでは、ガレットと蕎麦を同時には提供しきれないと判断したのでしょうか?

ガレットには月替わりのものもあるようです。

飲み物メニューには、イチローズモルトも載っています。
昼間っから、ウィスキーを飲んでガレットを食べて帰る生活なんて、とっても憧れてしまうのですが今日は車を運転して家に帰らなければなりません。
残念ですが諦めます。

そんな訳で、私が注文したのは「ゴルゴンゾーラ」のガレット(1,500円)

しばらく時間が経ったのち、やってきたのがコチラ。
大きめのお皿に蕎麦粉のクレープが端正に盛り付けられ、トッピングはゴルゴンゾーラのチーズ、ベーコンそれに半熟たまご。

この組み合わせで半熟卵を潰しながら食べれば、それはもう間違いなく美味しいに決まってます。

休日のランチ、或いは遅めの朝食としては最高に贅沢感があります。

キノコとか山菜が好きな妻殿は「きのこのガレット」(1,200円)を注文。

山菜蕎麦とかキノコ蕎麦がうまいんだから、蕎麦粉のガレットにキノコが合わない訳がないですね。

アルコールはNGなので、りんごジュースを注文しましたが、こちらは普通のりんごジュース。

しかしマスターから「うちのりんごジュースは初めてですか?」との質問。
「そうだ」と答えると、
「いつも直接取り寄せている自慢のりんごジュースが入荷できなくなっていて、今日のは普通の味のジュースなんです。」
とのこと。
すまなそうに言ってくるので、
「いや、いいですよ」なんて答えていましたが、店を出てからお会計の内訳を暗算してみたら、ちょっと値引きされているようでした。
仕事にこだわりを持った、ちょっと馬鹿正直なマスターのようです(笑)


さて、お腹も満足したし、お客さんも我々が最後になったので、遠慮なく店内をキョロキョロと見渡していると、フロア内にもイラストが数枚飾られているのが見えました。

そのうち、一休さんのイラストは分かったのですが、この大きなイラストは誰だったかな?と思っていると、(決して自分をアニメオタクだとは認めない)妻殿が言うには「かぼちゃワインの春助くん」だとのこと。

話を聞いてみると、なんとマスターはかつて東映でアニメのキャラクターデザインを担当していたアニメーターだったそうです。
アニメ化したときの春助君のデザインも担当したとか。
退職するときに、イラストを何枚か贈ってもらったんだそうです。

今は引退し、飯能で蕎麦ガレットのカフェを営業しているなんて、「人に歴史あり」って感じですね。
「人の世の潮騒の中に生まれて、去り行く時の流れにも消しえぬ一筋の足跡がある。」

ただノンビリ過ごすと決めた休日の昼には、ピッタリなお店なのでした。


【工房 時】
■所在地   埼玉県飯能市八幡町6-11
■営業時間  [水~金] 11:00~15:00 [土・日] 9:00~15:00
■定休日   月・火曜日
■最寄駅   西武池袋線 飯能駅
■駐車場   なし



 

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