太平洋を望む茨城県の大洗海岸は大洗磯前神社の麓に位置する磯浜で、明治の中頃から既に潮湯治の場として栄えていた歴史ある海水浴場。
隣のサンビーチ海水浴場とともに今も夏には大変な賑わいで、北関東の湘南海岸と言われているとかいないとか(?)
偕楽園での観梅のあと、宿をとったのは、その大洗海岸沿いにある
「里海邸 -金波楼本邸」さん。
金波楼さんは、元々大洗海岸でも老舗中の老舗の宿なのですが、数年前にわずか8室のみの高級旅館としてリニューアルされました。
シーズンオフの静かな海を眺めながら、美味しい魚でも食べさせてもらおうとやって来た次第です。
里海邸さんへのアクセスとしては、水戸駅や偕楽園周辺からだと車に乗って僅か20分程。
公共交通機関を利用するなら、JR水戸駅から鹿島臨海鉄道に乗り換えて大洗駅で下車してタクシーでも良いですし、水戸駅からバスに乗って大洗神社で下車すると宿の目の前に着きます。
多摩エリアから車で行くなら、常磐道と北関東自動車道を経由して約2時間ってところですね。
宿から道路を挟んだ向かい側には、地名の由来となった大洗磯前神社の大鳥居がどぉーんと建っています。
祭神は大国主命。
太古の昔に目の前の磯からこの地に上陸し、国を造った後に去ったと言い伝えられている由緒正しい神社・・・
・・・なのですが、今や大洗と言えば「ガールズ&パンツァー」の聖地。
こんな大絵馬が境内に堂々と(笑)
面白いから否定はしませんが、もう何百年かしたら海から上陸したのは国神ではなく、「戦車」って話にすり替わったりしませんかね。
そんな大洗界隈をブラブラ散歩してたら、チェックインの時間になりました。
宿の周囲には板塀が廻らされていて、漁師町の民家のような風情があります。
「里海邸」のほんの小さな木の表札があるだけで、ここから入って良いのか躊躇するくらい。
土間から靴を脱いであがります。
客室は8部屋しかありませんから、玄関大ホールのようなものはありません。
清潔感のある畳敷きの玄関から、くねくねと案内されるまま移動しますが、この辺りの設えは高級な日本旅館のよう。
小さなデスクのあるフロントを通り過ぎ、2階と3階にある客室へ向かいますが・・・
内装は日本家屋のようでも、建物自体はホテルだった鉄筋コンクリートの造りですから、しっかりエレベーターで上の階へと上がれます。
予約しておいたのは、2階にある「曲松」というお部屋。
畳敷きに座卓が置かれたスペースの奥にソファーセットの置かれたスペース。
そしてガラスの向こうには大洗海岸を望むウッドデッキ。
後ろを振り返るとツインベッドがすでにセットされていますから、一度チェックインしたら宿のスタッフが部屋に入ってくることはありません。
お籠り隠れ家仕様のお部屋ですね。
ミニキッチンには、サービスのドリップコーヒーとミネラルウォーターが用意されていて、その他冷蔵庫には有料のドリンクが入っています。
キッチンの奥には、洗面台とトイレの入り口があり、さらにその奥の海側には・・・
・・・半露天となる檜風呂!!
大洗は温泉地ではないので、お湯は大洗神社のある山からの清らかな湧水を沸かしたもの。
霊験あらたか…..かもしれません。
こんな景色を見ながら入浴なんて、最高でしょ!
体が温まったら、デッキで潮風を浴びながら読書でもしていれば、もう極楽気分。
半裸でウロウロしていたって、部屋には誰も入って来ませんから安心です。
ちょっと左手の方を見ると、神様が上陸して来たと伝わる岩礁に鳥居が立っています。
これが絶景愛好家やパワースポット愛好家の間で有名な「神磯の鳥居」。
初日の出がこの鳥居の間から昇る様が見事なんです。
私も写真でしか見たことはありません。
広いお風呂が好きな人のために、大浴場もあります。
それほど大きいものではありませんが、半露天風呂のついていない部屋は2部屋しかありませんから空いてます。
湯上りスペースには、座り心地の良さそうなチェアーとともに、ハーブティーなどのフリードリンクが用意されているので、ここで風呂に入りながらマッタリ過ごすのも良さそう。
1階にはライブラリースペースがあって、ここにも思わず座ってみたくなるようなウッドチェアーが並んでいます。
小部屋に分かれていて、昭和の中頃のちょっとリッチな家の別荘のような、落ち着いた雰囲気があります。
ここにもサービスのコーヒーやハーブティーが用意されており、気に入った本が見つかったら、ここで喉を潤しながら暫し読書に耽ることもできますね。
それほど広い館内ではありませんが、部屋の外にも宿泊客が自由に寛げる空間があちこちに造られています。
部屋数が8部屋しかありませんから、おそらく何処のスペースにいても静かな時間を過ごせるんじゃないかな。
館内に籠るのも良いのですが、大洗海岸のすぐ際にある旅館ですから、外にも出てみたくもなります。
階段を半地下へとトントンと降りると、海へと出られる裏口があります。
備え付けのスリッパを履いて外に出れば、そこはもう堤防沿いの通路。
二軒隣は、津波の際の避難用階段兼、見晴らし台になっています。
さぁ明朝、日の出は見られるでしょうか?
天気予報はこれから下り坂とのことで、心配です。
宿に戻ると夕食の時間。
一階の海沿いの部屋が食事処。
料理は当然、海の幸が中心。
まずは鱈の白子の茶碗蒸し。
正に旬のど真ん中。
マッタリとコクがあって美味しい。
お造りは、平目、白魚、石鯛。
平目も旬の魚です。
白魚は、地元の霞ヶ浦産なのかな?聞いてみれば良かった。
透明で鮮度の良さを感じます。
そして、冬の茨城での味覚の王様、「あんこう鍋」
身やら肝やら、ゼラチン質の皮やらと、地元野菜を煮込みます。
高級懐石料理調ではありませんが、素材の良さを生かした素朴な料理です。
日本酒が進みますねぇ。
それに、この日の鍋は「肝煎の味噌仕立て」ですから、スープも濃厚です。
味が染みて美味い!
あんこう鍋で、もう満腹に近くなりましたが、続いて前浜しらすピザ
なんか変化球を投げ込んできましたが、大洗海岸の前浜でとれたシラスも茨城の冬の味。
サクサクとして美味しいです。
酢の物で口をサッパリとさせ・・・
肝煎味噌仕立てですから、ただの鍋スープよりもコクがあります。
見るからに濃厚でしょ。
大満足です。
デザートは、ライブラリースペースに移動していただきました。
いやいや、もう満腹ですけど頑張りました(笑)
今回は、あんこう鍋メインのプランでしたから特にそうだったのかもしれませんが、ガチガチの日本料理ではなく、どこか素朴な田舎料理って感じの夕食でした。
これはこれで、他の旅館との差別化ができて面白いと思います。
部屋に戻ると、満腹だしお酒も飲んだしで、もう眠くなってしまいます。
しかし、真東に太平洋を望む立地のこの旅館ですから、満月に近い時期なら海から昇る月の出をテラスから見ない手はありません。
まぁ、晴れていればの話ですけどね。
結果、天気予報通り、夜から翌朝にかけてはドン曇り。
月がだいぶ昇ったこの短い時間だけ、雲が切れて磯浜を照らす月が顔を出してくれました(喜)
期待していた「神磯の鳥居」を照らす朝日は見ることはできませんでしたが、これは「また来なさい」という神様の思し召しかもしれません。
翌日の朝食は、夕ご飯と同じテーブルで。
夜はわからなかったけど、朝見るとこんな絶景でした。
おかずは、鯖と鯵の立派な干物に・・・
野菜のポトフにサラダ、しらす干しなどのご飯のお供。
お味噌汁は、多分、地元涸沼産のしじみ。
朝食も贅沢な高級感はないけれど、地場産の旬の食材を集めた素朴な料理という感じ。
私は好印象を持ちました。
そうそう、茨城県も海沿いの鉾田市あたりでメロンやイチゴの生産が盛んでしたね。
バームクーヘンでも有名な深作農園でイチゴ狩りをして帰りました。
コキアとかネモフィラとか花の時期と合えば、隣町にある国営ひたち海浜公園に立ち寄ってから帰るのもよろしいかと思います。
里海邸さんも、コロナの影響で営業を自粛していましたが、この6月からは営業再開したとのメールが届いたので、応援カキコです。
【里海邸 -金波楼本邸-】(さとうみてい ざんぱろうほんてい)
■所在地 茨城県東茨城郡大洗町磯前町6883
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