吉祥寺駅北口から歩いて約12分。
駅前の喧騒からはやっと外れた五日市街道沿いに、手打ちそばの老舗実力店『中清(なかせい)・清田』さんがあります。
この日は武蔵野市民文化会館でのコンサートが始まる前に、ランチをとりに立ち寄りました。
JR中央線と京王井の頭線が乗り入れる吉祥寺駅北口から、成蹊大学方面へ距離にして1kmほど。
東京の住みたい街ランキングで毎年上位にランクされる街の賑わいも、この辺りまで来るとやっと落ち着いてきます。
それでも多摩地区屈指の繁華街である吉祥寺駅の徒歩圏ですから、五日市街道沿いのこの辺りには駐車場完備の大型ロードサイド店は少なく、マンションの間に昔からの小規模な飲食店や店舗が点在している区域。
中清さんにも専用の駐車場はありませんが、コインパーキングなら店の近くに何箇所かあります。
駅前周辺はいつも渋滞しているので、あまり車で乗り込む気にはなりませんが、この辺りまでならギリギリ車で来ても良いかな・・・と思わせる立地です。
外観は、よくある木造モルタル造りの昔ながらの小さな蕎麦屋。
大正末の創業で、昭和の初期からこの場所で営業していて、今のご主人が三代目。
多摩地区では老舗と言えるそば処。
ただ、この手の店構えの蕎麦店は、機械打ちの蕎麦や丼ものを、安く早く提供する店というイメージがあるので、事前情報がないとワザワザ入る気にはなりません。
ここもそんな「町の蕎麦屋」的な店だったそうですが、それに飽き足らない研究熱心な今のご主人が「庶民価格で食べられる手打ち二八蕎麦の店」を目指して方針転換したんだそうです。
到着したのは、週末の午後12時過ぎ。
暖簾をくぐると既に店内は賑わっていて、最後に一卓だけ残った小上がり席に着くことができました。
人気店だとは聞いていたのですが正にその通り。
その後も次々と来客があって、満席なのを見て諦めて帰ったり、外で待ったりしていました。
週末の昼時は、12時前には入店したほうが良さそうですね。
店内に入ると、年配の花番さんが迎えてくれます。
奥さんなのかな?
座席は、4人掛けと二人掛けのテーブル席が合わせて五つ。
それに小上がりに4人掛けの座卓が二つあります。
30人までは入れない、外観どおりのこじんまりとした店内です。
真ん中のテーブル脇には、実際に使っているのか不明ですが石臼が据えられていて、「自家製粉もやってるよ」的なアピールがされています。
客層は、地元常連らしき客や近所の会社員グループ、夫婦や一人客や子供連れなどとバラバラ。
自腹なら蕎麦よりもっと腹持ちのよいものを食べたい、腹ペコ学生層以外に親しまれている店のようです。
半数ほどの客は、粋な江戸庶民の如く、蕎麦前の日本酒やビールを楽しんでいます。
中高年の週末パラダイスですね。
比較的若い層も蕎麦前をやってましたから、洒落たカフェのランチに飽きた層が変化球を楽しみに来てもいるようです。
メニューを見ると蕎麦の種類が、「更科系あずまそば」「田舎系さとそば」「生粉打ち」と三種類もあります。
おそらく厨房はご亭主一人で切り盛りしているであろう小さな店なのに、全て手打ちで3種類も蕎麦を揃えるのは大変じゃないんですかね?
それに「手打ちうどん」まであるようですから、全く恐れ入ります。
この店では、石川県産を中心にした日本酒とおつまみ類が充実しているので、酒好きの蕎麦好きには堪らない類の店。
とはいえ、この後コンサートを聴きに行くところですし、そもそも車で来ているので酒なしで気分だけ・・・
とろろの磯辺巻きや、
京風ガンモを頂いてみました。
それぞれ500円くらい。
他にも小田原の鈴廣の板わさやら、茄子の生姜焼きやら、酒のあてが色々あるので、それらを選ぶのも楽しいですね。
メインの蕎麦は、酒が飲めなかった分の贅沢として、ちょっと割高な・・・
『生粉打ち鴨せいろ』(1.220円) を注文。
蕎麦は、細打ちで喉越しの良いもの。
噛むと甘みを感じる美味しい蕎麦でした。
でも、“生粉打ち”の十割蕎麦なので、もっとゴワゴワした感じかと思っていたので、滑らかな喉ごしが少々意外。
間違って二八そばが来たのかと思ってしまいました。
製粉技術が進歩して、今では繋ぎがなくても、細切りの蕎麦を打つなんて簡単なんでしょうか??
イヤ、きっと店主の技量がスゴイんですね(笑)
暖かくて甘めの味付けの鴨汁は、葱を背負った合鴨の脂と旨味が前面に出ています。
星の軽く散った蕎麦を浸すと、見るからに美味そうなビジュアル。
冬はやっと越したけど、暖かくもなりきっていない時期でしたので、汁だけ暖かい鴨汁蕎麦くらいが、体も冷えなくて季節的にはベストマッチでした。
他にもメニューを見ると、
暖かい「本鴨南ばん」や、
うどんでも蕎麦でもOKな、鶏肉の入った「南極カレー南ばん」、
さらに鶏肉が豚肉に代わった「北極カレー南ばん」なんてのがあります。
南極?北極??なんのこっちゃ???と少し悩みましたが・・・
南極には鳥の仲間のペンギンがいるから鶏肉、
北極には四つ足のシロクマがいるから豚肉・・・というネーミングなんでしょう(笑)
次回来たら、こちらも試してみたいですね。
姿は見えませんでしたが、おそらく厨房にいるのであろうご亭主とご夫婦二人で切り盛りしている店のようです。
なかなかの人気店で、蕎麦やつまみの種類も多いので、料理が提供されるまでに時間はかかりがち。
休日には、怠惰に昼から蕎麦前を楽しもうという大人たちのパラダイスにもなっているので、客の回転も鈍りがち。
本来の江戸っ子の蕎麦前は、もっとスッと飲んで、サッと食って、パッと帰るはずなんですが、ここは江戸じゃないですからしょうがないですね(笑)
酒を飲まなくても「カレー南蛮を饂飩で食べて、『あずまそば』と『いなかそば』を追加して、シェアしながら食べ較べたら楽しそうだな・・・」などと次回構想が思い浮かんでくる、時間と腹時計に余裕をもってさえいれば、いろいろなパターンで楽しめる昭和情緒の蕎麦処なのでした。
【中清 手打 清田】(なかせい てうち きよた)
▪️所在地 武蔵野市吉祥寺本町4-4-15
▪️営業時間 11:30-22:00
▪️定休日 不定休
▪️駐車場 無し(周辺にコインパーキングあり)