夏のドライブで訪問。
八ヶ岳山麓に位置する山梨県北杜市内(旧長坂町)に、「日本の名水百選」に選ばれている「三分一(さんぶいち)湧水」という湧き水があります。
ここは武田信玄が甲斐の国を統治していた戦国時代、八ヶ岳から湧き出る豊富な伏流水をめぐって争う周辺の三つの村落に、公平に三分の一づつ水を分けるため造られた分水施設。
武田家の優れた領国支配の証として、地元が誇る歴史遺産の一つです。
確か昔、歴史の教科書に「棒道」「信玄堤」と共に載っていたような?
3つの水路を滔々と流れ下る清水によって、真夏だと言うのに周囲の森は涼やかな空気に包まれています。
歴史好きではなくても、高原の散策スポットとして楽しめます。
入口には、広い無料駐車場を備えた三分一湧水館という道の駅のような施設があるので、車での立ち寄りには極めて便利。
JR小海線の甲斐小泉駅からも歩いて10分くらいの位置にあるので、鉄道でのアクセスも良好です。
その三分一湧水館に隣接して建っているのが
手打ちそば『そば処 三分一』。
通常、観光施設に付属する飲食店には、味の上ではそれほどの期待はしないものですが、ここの蕎麦はそんなレベルではないとの専らの評判。
そうは聞いても半信半疑、しかし内心は結構な期待を抱いての訪問です。
湧水近辺の散歩をした後、昼食にしようと店の前まで戻ってみると、行列こそ出来ていなかったものの店内は満席。
入り口に置かれたウェイティングボードに記名すると、フードコートなんかでよく見るお知らせブザーを渡されました。
準備ができたらブザーを鳴らしてくれるシステムですね。
物産館なんかを見ながらプラプラしていると、15分程でブザーが鳴りました。
店内には、小上がりに4人掛けの座卓席が多数並び、その周囲にはテーブル席。
合わせると結構な席数があって席間隔は狭め。
そこがほぼ満席になっているのですから、ガヤガヤとして落ち着かない様子です。
高い天井に太い梁の通った建物は古民家風の風情十分なのですが、優雅に落ち着いて食事をする雰囲気ではありません。
まぁ、観光地という場所柄、それは仕方ないことととハナから承知はしています。
厨房の方を見ると大きなガラス窓が嵌め込まれていて、職人が今まさに蕎麦を打っているところ。
嘘偽りなく「正真正銘の手打ちだぞ!」というアピールが感じられて、眺めていると期待値が上がってきますねぇ(喜)
メニューを見ると種類は多くはなく、蕎麦は数量限定の十割そばと、二八くらいなのか(?)普通のそば。
それに天ぷらを付けるか、もりにするかぶっかけにするかの選択肢。
初訪問の蕎麦屋に行った時にはお決まりパターンとなります、十割天もりそば(1,500円)を注文しました。
笊、薬味、天ぷら、漬物、蕎麦つゆの他に塩が少々盛られた小皿。
蕎麦を見ると、星が散り、十割だというのに端正な細切りで、確かな蕎麦打ちの技術を感じます。
とても美味しそうな外観です。
天ぷらは、1,500円の天麩羅蕎麦としては豪華でも貧相でもない、標準的なボリューム。
野菜が中心で海老が一本。
肝心のそばを食べてみると、十割なのにブツギレて短いというわけでもなく、冷水でキュッとしめたようなコシもあって、風味もある。
あぁ、この蕎麦、本当に美味いや!
後で調べてみると、地元八ヶ岳山麓産の蕎麦粉を使用しているとか。
そんなこだわりも嬉しいですね。
春先なら山菜を揚げるのでしょうが、夏は夏野菜がメインです。
でも、八ヶ岳山麓は野菜の名産地ですからね、野菜も美味いですよ。
蕎麦湯も、ドロドロとまではいきませんが、蕎麦粉を溶き入れたような白濁したもの。
押さえるべきポイントを、キチンと押さえてあります。
これは確かに、観光ついでに、行程上仕方なく食べる蕎麦ではなく、わざわざ食べに来るべきレベルの美味しいお蕎麦でした。
湧水見物のついでに蕎麦を食べるべきか、蕎麦を食べるついでに湧水を見るべきか?
食後、物産館の隣に有料の資料館兼展望ホールがあったので寄ってみました。
資料館には周辺の八ヶ岳南麓の湧水や、その他歴史資料の展示があります。
これは三分一湧水の模型。
一番上の階にある展望ホールからは、蒼く霞む富士山が一望できました。
これは絶景!!
南アルプスの山並みも見渡せます。
高原ドライブの途中にオススメな立ち寄りスポット。
今度の夏は、気兼ねなく行けるようになっているといいですね。
【そば処 三分一(さんぶいち)】
■所在地 山梨県北杜市長坂町小荒間292-1
■営業時間 11:00-15:00
■定休日 火曜日(4月〜11月無休) 年末年始
■最寄駅 JR小海線甲斐小泉駅
■駐車場 有(とても広い)