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寿司割烹『こい勢』@山形県酒田市〜やっぱり美味い人気寿司店

今年の夏の旅行は、山形県の日本海側、庄内地方へのドライブ旅。

庄内地方の中心都市である山形県酒田市は、最上川の河口部に位置し、かつては京の都と各地方との物通を担う北前船の拠点となり、「西の境、東の酒田」と称されるほど繁栄した港町。
庄内米の集積地としても栄えました。(今だって庄内産の「つや姫」はとても美味い)

それだけ栄えた街ともなると、お金持ちの船主やら大商人やらの旦那衆が、夜ごとチャカポコ繁華街を賑やかすようになるのは必然であり、そこから食文化が花開き、美味い料理屋と舌の肥えた住民が増えていくものなのです(私見)

今は物流の主役が、海路の北前船から陸路の鉄道や自動車に取って替わられてしまい、最往時の賑わいは山居倉庫や本間家旧本邸などにその跡を残すのみですが、変わることなく庄内浜の魚は美味いし、あご出汁淡麗スープのラーメンも町の名物だし、日本酒では「上喜元」ブランドの酒田酒造や、生酛造りの「初孫」があることだし・・・

隣町の鶴岡市にある「アル・ケッチァーノ」は、庄内産食材を使用した地産地消レストランとして有名である等など、まだまだ食の魅力に満ちた地域なのです。

しかし旅行中、いつも残念に思うのは、食べたいものは沢山あるのに、外食できるのは一日一回の昼飯のみということ。
ビジネスホテルにでも泊まって、夜も外食に繰り出すという手もありますが、温泉旅館でひと風呂浴びた後、そのまま館内で地酒を飲みながら食べる夕食の幸福感も、また捨てがたいものがありますからね。

(前回行ったときの店構え)

迷った末、その庄内での貴重な昼食の機会を、以前行ったときの感動が忘れられない、酒田市内の寿司割烹「こい勢」さんでとることに決めました。

東京で修行を積んできた親方が、庄内浜であがった新鮮な魚を江戸前の技術で握る人気の寿司店です。


ランチでも予約必須の人気店

さて前日は、我が家にとって庄内地方での常宿となっている、湯野浜温泉「いさごや」に宿泊。

宿から「こい勢」さんに、翌日ランチの予約電話を入れると、
『ランチはカウンターなら、11:00、12:00、13:00の三部制。メニューは3,300円のおまかせ握り以上のみ」だとのこと。
もとより、観光途中のランチで長居するつもりもなく、注文もその「おまかせ握り」の予定でしたので、何も問題はなく、12時からのカウンター席が二人分なら空いてたので、予約をいれてもらいました。

しかし、以前来たときは3部制などにはなっておらず、確かカウンター席での予約注文も「おまかせ握り」限定ではなかったはず。ランチの予約システムに変更があったようです。
この店は旅行ガイドブックにも掲載されている寿司店ですから、
「これは人気がでて、客数稼ぎ重視の殿様商売を始めたのか?」と、少々嫌な疑念が湧いてきてしまいました。

翌日の朝は宿でゆっくり過ごし、11:00に車で出発。
日本海に沿うようにして酒田方面に伸びる、左手に防砂林、右手に果樹農園が続く県道を北上します。途中、庄内空港や初孫酒造、土門拳記念館の入り口を横目に快適に走り、30分程度で酒田の市街地へと到着。

🌀アクセス

「こい勢」さんの所在地は、山形県酒田市相生町1丁目

最寄駅は、JR羽越本線酒田駅
駅からは歩いて5分程度だし、本間美術館までも歩いて5分。
電車移動の観光客にも優しい立地となっています。

の場合は、店の隣と、道路向かいの2箇所に駐車場が用意されているので、どちらかには停められるでしょう。

もっとも多摩エリアからだと、電車なら上越新幹線で新潟まで行き、羽越本線の特急に乗り換えて5時間半程度、車なら関越自動車道から日本海東北自動車道を経由して同じく5時間半程度の道のりですから、まぁ、近くはないですね。
旅行や出張の際に是非。


🌀外観と店内の様子

店の前に立ってみると、店舗は隣の空き地だったところに新築・移転していました。
右側のいかにも港町の寿司屋風の建物が閉鎖した旧店舗で、左側の外観がスタイリッシュで今風な建物が新店舗です。

大きさは同じくらいの建物で、ともに間口が狭く奥に長い町家造り
コロナ騒ぎの間にでも、老朽化を理由に引っ越したのかな。
・・・しかし、建物を増築したり、支店を増やし始めると、味やサービスが落ちていくなんてのはよく聞く話で、ここは大丈夫かいな?

入口横の壁を見ると、「当店での支払いは現金のみ」との札が。

これは、要注意です。
時々「ランチの支払いは現金のみ」なんて店を見かけますが、そんな平気でカードの利用規約違反をするような店は、私は大嫌い。
ランチはギリギリのサービス価格にしているから手数料分だけ赤字になるだとか、言いたいことは分からなくもないのですけどね。
人の財布の中身を覗き込んで、「今日はあれで払え、それを使え」なんて言われるのが気に入らないのです。
ただその点この店は、昼も夜も一貫して現金払いのみとしているので、それはそれで店の方針なのですから全く問題はありません。

でも、一般的に寿司屋の支払いは、それなりの額になることが多いでしょうから、現金払いのみと知らないと大汗をかく客もいるんじゃないかな。
とにかく、要留意。


引き戸を開けて中に入ると、やはり店内は横幅が狭く、奥に向かって細長いつくりになっていました。
酒井は古い町ですからね、このあたりは土地の区画が昔からそうなっているのでしょう。


手前は調理場になっていて、廊下の奥にカウンター席があるようです。
調理場の若い職人さんは、「いらっしゃいませ」とハキハキと元気な声で挨拶してくれて、まずは好印象。

奥には十数席ある鍵型のカウンターがあって、親方の両脇に若手の職人が二人ほどつく態勢。


以前はあったガラスのネタケースがなくなり、カウンター周りがスッキリしました。
これも今風。

こい勢さんは、1971年の創業で、酒田の人気寿司店の中では新しい方ですけど、もう50年経っているんですね。
親方は、始終テキパキと仕事を続けていて、一方カウンターを見渡しての声掛けもしてくれています。若い職人さんとの息もあっていて、客から見ると期待して任せられる態勢。

予約の12時には、時間通り他の予約客もそれぞれ席につきました。
見たところ、カウンターには地元客もいるし観光客もいる、人数はお一人様から3人連れまで、女性やや多し、年代は30代以上、皆さんお酒はちょっとだけ・・・といった感じの客層。
カウンター席の奥と2階には座敷席もあって、そこにも団体のお客が入って繁盛している様子。
全体に皆、騒がしくもなく、上品に静かに食事を楽しむ雰囲気となっていて、この点も好印象でした。

🌀メニューと料理

メニューを見ると、予約時に注文してある『特選 旬のおまかせ握り』(3,300円)のほか、お品書きには一貫ごと値段が記されている安心の明朗会計。

カウンター席は、全てのお客がこの「おまかせ握り」での同時スタートです。

まず1貫目は、いか肝醤油」京都の胡麻を振って

何のイカか聞き忘れたけど、庄内浜の夏イカと言えば、スルメイカだそうなので、それかな。
イカの甘味と肝の旨みが合わさって美味い。旬の味。
シャリは小さめ。米粒がしっかりしていて、口の中でホロッとほぐれる握り具合。
ネタも、小さなシャリに合わせるように仕事がされており、これぞ江戸前の仕事。

2貫目は、「のどぐろあぶり」塩味をふって

「白身のトロ」とも称される高級魚。庄内浜でも揚がるんです。
旬の長い魚で、8月も旬だけど、最高に脂がのるのはもう少し後なのかな。
炙った皮の香りと身の旨味、柔らかくて十分美味しい。塩だけで十分。

ここで、アラ汁が登場。
エビの頭が入ってました。

親方からは、「シャリを小さくしたい方は言ってください。小さくする分には、いくらでも小さくできます」とのアナウンス。
へぇ、大きくすることはできないんだね。ネタとのバランスが悪くなるのかな?
この後も、親方の握りワンマンショーは、比較的早いスピードで続きます。

3貫目は、「すずき」蓼酢をのせて

夏の高級魚、スズキです。
鯛や鮃の味が落ちる夏の間、スズキは逆に塩分濃度の低い浜の近くによって来て、脂ののりが良くなります。
「スズキには蓼酢が合うと思います」とは、親方の解説。
身に独特のクセが付くことがあるらしく、洗いにするのも絶品らしいのですが、ここでは川魚の鮎とも相性の良い蓼酢と合わせたのでしょう。
でも、クセなんて感じなかったので、私には塩だけでも十分だったかな。

4貫目は「ヒラメ」肝醤油で

なんのかんの言っても、「白身の王様」タイかヒラメが入ってなきゃ寂しいよね。
新鮮さの証でもある肝を載せて、旨味倍増。

5貫目は、「ガサエビ」

日本海のみで獲れる、甘エビよりも甘いエビ。
収穫量も甘エビほど多くなく、日持ちもしないので産地以外ではあまり流通せず、「幻のエビ」なんて言う人もいるとか。
こういう、その土地ならネタを味わえるのが、旅行の醍醐味。美味い。

6貫目は、「ウマヅラハギ」の肝のせ

庄内浜でも漁獲高が増えているウマヅラハギ。
高級魚とは言えませんが、サッパリとした味の鮮度の良い白身に、貴重な肝が合わさると、気分がアゲアゲになる魚。
やっぱり美味い。

7貫目は、「ワラサ」

出世魚「ブリ」の1つ手前ですね。
真冬のブリのタップリな脂乗りと比べると、バランスの良い旨味の魚。

8貫目は、「本鮪中トロ」熟成赤酢シャリで

見ての通りのネットリとした中トロ。何も申し上げることはございません(喜)
濃厚赤身には、赤酢があうようです。
いよいよクライマックス。

最後は「バフンウニ」

ムラサキウニではなく、バフンウニですから、流石にこれは庄内浜産ではないでしょう。多分、北海道産。
子供の頃、なぜか苦手だった雲丹も、今は大好物。握りに雲丹が入っているのと、いないのとでは、満足感が段違いです。ムラサキウニより、少し赤っぽくて鮮やかな色かな。お盆前だし、苦味もない。食べることができて幸せです(笑)

・・・と、ここまでが、「おまかせ握り」となります。
割りとハイペースで握ってこられたので、ここまでで30分ほど。一時間入れ替えの3部制ですから、あと30分持ち時間があります。
親方からは「追加注文があれば、おっしゃって下さい」との声がかかりました。
ここの寿司屋の非常に危険なところは、シャリが小さめなので、まだまだ食べられてしまうところです(笑)
お酒を飲みながらの人なんかには適量のようで、ここでお会計をされて解散となっていましたが、それ以外の方は、何か一貫くらい追加注文する方が多かったです。

私も、壁の貼られた「新子」の札が気になっていたので、追加注文。
親方からは「新子もサイズが大きくなってきたので、一枚で握れるようになりました」との説明。

新子とは、ニシン科のコノシロの稚魚で、江戸前寿司の大定番「コハダ」の弟分のこと。
早いものだと、6月中頃から小さな新子が出回りだして、9月の終わりにはもう大きくなって、コハダと呼ばれるサイズになります。
初物好きの江戸っ子が好んだとか。
早い時期の新子は5センチ程の大きさしかないので、一貫握るのに数枚の開いた新子が必要になり、とても手間がかかります。
初物は市場の価格も高額なので、高級な寿司屋以外では、そんな数枚重ねの新子にはあまりお目にかかれません。
コハダと比べると、身が薄くて柔らかくて、青魚臭さも弱いので、酢で締める時間も短くしているはず。旬のど真ん中の味でした。

追加の2貫目は、「サクラマス」
山形県の県魚なんだそうです。

前回は、おまかせの中に入っていて、柔らかく脂がのった旨味に感動したのですが、今回はそれと比べると味が少し弱かったかも。
記憶の中で、味を美化しすぎていたかもしれません。でも十分美味しい。春先から8月末までの魚です。

このあたりで腹の方は満足してきたのですが、最後に食べたことのない地魚を試してみたくなりました。メニューにあった「おうよう」を注文してみたのですが、残念ながら切らせているとのこと。
でも「白身なら、もっと美味い魚入ってますよ。キジハタかクエなんてどうですか?」なんて誘惑をしてきます(笑)
そりゃあ、「クエ」は美味いでしょうし、「キジハタ」?は食べことあったかな??

どちらにしようか悩みましたが、この際、「迷ったら両方いけ」の方針で注文(笑)
まずは、「キジハタ」レモン塩で

鮮度が良いようで、身がコリコリ。
上品な白身の旨味を感じます。

続いて「クエ」

さすがに高級魚。味の好みは人それぞれですけど、こちらの方が、同じ白身でも、脂ののりが一層良いようで。
クエは西日本の魚かと思っていましたが、庄内浜でも揚がるんですね。

このくらい追加していたら、最後の一組になってしまいました。
あまり長っ尻するのも粋じゃないので、ここらで会計としました。
あぁ、楽しかった。


写真を見返すと「特選 おまかせ握り十カン」なので、10カンあったはずだけど、9カン分の写真しかないですね。
途中からもう幸せな気分になっちゃってましたし、もうよく思い出せませんが(笑)

庄内浜の旬のネタを中心にした、これだけの寿司をカウンターで食べても、お代は二人で1万円ちょっとだったはず。
もう大満足です。
店に入るまでは、「あれ、大丈夫かいな?」なんて、疑ってしまったことをお詫びいたします(笑)

注意点としては、
1.以前よりもっと人気店になっているので、週末ランチの予約は早めが吉。前日では遅いかも。
2.ランチは1時間毎の3部制。もっとゆっくりしたいなら、座敷席の予約を。
3.支払いは現金のみ。
そして、そんなことは全く気にならないくらい、リーズナブルで満足度の高い寿司屋でした。
むしろ、このシステムなら、この内容の寿司を、この値段で提供し続けられるというのなら、是非、そうしてほしいところ。
なんてったって3,300円。
いや、ほんと、おすすめですので、酒田にお越しの際には是非どうぞ。

あぁでも、折角なら、焼き物の穴子と、貝類からも何か一つ注文すれば良かったなぁ。これはまた、次回の宿題です。


【こい勢】
■所在地    山形県酒田市相生町1-3-25
■最寄駅    JR羽越本線 酒田駅
■駐車場    有り
■営業時間   (昼)11:00~14:00 (L.O.13:30) (夜)17:00~21:30(L.O.21:00)
■定休日    月曜日(祝日の場合は翌日)



 

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