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本格手打『田毎』@山形県酒田市〜「蔵王鴨」の冷やし鴨南蛮そば

山形県酒田市に滞在中の夏の一日。

海の幸に恵まれたこの地に来ているからには、ランチには「こい勢」おまかせ握りでも食べたいところですが、今年は前の日に鼠ヶ関の「鮨処 朝日屋」で握り寿司を食べたばかり。

では、今日は鰻でも食べようかと、かつては料亭が立ち並んでいた旧繁華街、日吉町にやってきました。

聞けばここ酒田には江戸の頃から、北前船で潤った海鮮問屋の旦那衆が大勢いたそうだから、そんな町の鰻重はきっと美味いんじゃなかろうか?

酒田市中心部の観光スポットは、本間美術館旧本間邸、相馬楼山居倉庫など、過去にもうあらかた見てしまっているので、特にもう必ず行かねばならないところもありません。
日和山公園の駐車場に車を停め、とりあえずかつて料亭街として隆盛を誇り、やがて寂しく廃れつつある日吉町界隈を、ぶらぶらと散歩しながら向かいます。

料亭が立ち並んでいた場所ですから、往時は繁盛していたに違いない魚屋も、今は閉店して空家のよう。

酒田に限らず、町の魚屋って本当に少なくなりました。
この建物なんて風情があるので、リノベして飲食店にでもすれば良いのになぁ。

おお、上喜元の酒田酒造はここにあったのですね!

この蔵元は、まだまだ廃れることはないと思います。

日吉神社の参道沿いも、往時にはこんなに空き地なんてなかったのでしょうね。

れはこれで風情のある景色ではありますが。

ほんのひと頃、日本最北のキャバレーとなった時期もある「白ばら」さんも、とうに閉店し、くすんだ灰色の建物を残すのみ。

かつて日本の各地にあった大箱キャバレーも、今は絶滅危惧種となりました。
この建物なんかは、「昭和日本の産業遺産(第三次産業)」として保存べきじゃないのかな。
半分本気です(笑)

少し前までの日本に確実にあった、サラリーマン文化、社用接待文化、あるいは富裕旦那衆文化の名残り。日本人として何を残していくべきかは、ユネスコなんぞの外国の組織に頼らずに、日本人の価値観で決めるべきでしょう。

私はその少し後の世代なので、大箱キャバレーなんて、「楽しいロンドン」のTVCMや、任侠映画やらでしか見たことがありませんし、正直言うと、営業していたとしても、入ってみたいとも思いません。ただ、内装をそのままにカフェか何かに改装して営業してくれたら、是非行ってみたいなぁ。
ミニテーマパークに行くような好奇心で、いわば「昭和の相馬楼」として。

こちら旧料亭の「山王くらぶ」

幸い登録有形文化財に指定され、博物館として公開されています。

このほかにも、ぶらぶら歩いているだけで、趣のある建物をいくつも目にできるので、散歩していて楽しいです。

しかし、人の流れの変わってしまった斜陽の街だと、ノスタルジーを感じすぎてしまって、そのポテンシャルを過小評価していたようです。

肝心の鰻屋さん(うなぎ割烹 玉勘)に、営業開始の時間を狙って行ってみると、なんと予約のみで既に完売とのこと!

何という人気店(驚)

門構えも立派だし、ここの鰻重、食べてみたかったなぁ。こんなことなら、しっかり予約しておけばよかった(泣)

まだまだこの旧繁華街にも、しっかり繁盛している人気店が残ってるってのは、それはそれで結構な事です。


気を取り直して、第2候補として考えていた、これも老舗の別の鰻屋に行ってみようか?とも考えましたが、ひょっとしたら夏の鰻屋は、どこも混んでいるのかもしれないと不安になり、方針を変更して歩いてすぐの手打蕎麦屋に行くことにしました。

向かったのは、『本格手打 田毎』さん。

本格手打ち田毎

こちらも日吉町の景色によく馴染んだ、素晴らしく風情ある日本家屋です。

元は、お茶屋さんか何かだったのかなぁ。元三味線の師匠の家だと言われても信じるような外観

駐車場は、店の道向かいに5台分ほど用意されているので、車で直接乗り付けることも可能です。


暖簾をくぐって中に入ると、迎えてくれたのは物腰が丁寧で、いかにも実直そうな老夫婦。

「ちょうど混み合っていて、時間がかかるのですが…」とのことでしたが、この日はキチキチのスケジュールは組んでいなかったので、了承して案内してもらいました。

店内には、元は襖で仕切られていたのであろう畳の部屋が三つ。

玄関入ってすぐ左手にある六畳くらいの個室からは、坪庭も眺められて良い感じ。
でもこの部屋は小グループ用の予約席かな。

奥へ進んですぐの部屋には。5-6人座れそうな座卓席が一つ。

そのすぐ奥の間には、4人用の座卓席が四つ、割とキツキツに並べられた部屋がありました。

全体的には、本当に普通の民家のつくりですね。

幸い一番奥の間の、ひとつだけ残っていた座卓席に着くことができました。

席の座り心地としては、後ろの席との離隔が狭いので、先客にだらしなく座られてしまうと、ちょっと窮屈になってしまうところが玉に瑕。

あと、足の悪いお年寄りには、ちょいと辛いかもしれません。


何かオススメの料理はあるのかな?と、壁を見まわすと、ほぅ、この店は何やら鴨推しをしている様子です。

蔵王地鴨というブランド鴨が、山形にはあるようです。

しかし、鴨かぁ。
鴨蕎麦は好きだけど、店によっては「こんなものか」と、味や鮮度にがっかりさせられたことも多い食材なので悩むところ。

メニューを見ると、冷やし中華ならぬ、
「冷やし鴨南はじめました」
と、写真付きで猛アピールしています(笑)

でも、よく見ると残念ながら予約限定とのこと。

それでは仕方ないと、我が家の初めてきた蕎麦屋での注文ポリシーにのっとり、「天せいろ」を注文しました。

すると、しばらくしてご亭主から
「今日は冷やし鴨南の予約が入っていて、材料が揃っているので変更できますが、どうですか?」
とのお誘いがありました。

妻殿は、喜んで即答「Yes!」
私は、二人で同じものを頼むのもつまらなかろうと、天せいろのままでお願いしました。

先客のテーブルにも、なかなか蕎麦が届かない様子だったし、事前に混み合っていると聞いていたので想定の範囲内なのですが、待つこと30分ほどして、その「冷やし鴨そば」が先に到着。

ひやし鴨南

おぉ、鴨肉と相棒のネギがトッピングされ、彩にカイワレとサヤエンドウが散った、実に美味そうなビジュアル!

少々味見させてもらいましたが、鴨がしっとりして柔らかく、臭みも全くなくて凄く旨い!

さすが地元のブランド鴨、推しているだけのことはあります。

ぶっかけ汁は甘めのもので、浸した蕎麦を鴨が背負ってきたネギとともにを啜り込むと、これまた美味い!

蕎麦自体、丁寧かつ端正な姿に細打ちされたもので、喉越しも良好じゃないですか。

おぅ、これは失敗。
お誘いにのって、私も「冷やし鴨南」にしておけば良かった!!
蔵王産の鴨という、山形らしさもあったしね。

またしばらく時間が経って、ようやく私の天せいろも到着。

蒸篭に盛りつけられた姿を見ると、ムラなく端正に打たれた蕎麦であることが、尚更見てとれます。

天麩羅は、懐石料理の一品のような、高級感のある器に盛り付けられてきました。

海老天が2本もあって豪華です。彩もあるし、ボリュームも十分。
海老だけ、ちょっとボテっとした揚げ具合に感じますが、蕎麦屋の天麩羅としては十分なもので、敢えてケチをつけるならっていう程度の話です。

ワサビを細打ちの蕎麦にちょいと載せ、辛汁につけて食べると、うん、せいろ蕎麦も美味い!

表の看板に、酒田にありながら「江戸前蕎麦」だと書かれていましたが、この蕎麦の喉越しと汁の辛さは、まさに江戸前嗜好のもの。
満足のいくお味でした。

蕎麦湯は、蕎麦粉を溶いてトロッと白濁させたタイプ。

御亭主のサービス精神を感じます。

ご馳走様でした。

しかし、事前に承知していたので問題ありませんが、蕎麦の提供には時間がかかります。
たぶん厨房では、御亭主がワンオペで、真剣かつ丁寧に調理してくださっているのでしょう。

そうか!一緒に冷やし鴨南蛮どうですか?と聞かれたのは、皆んなの注文を統一できれば、より早く提供できますという意味もあったのですね。空気読めなくてすいません。

帰りがけに、ご亭主から「お待たせしてしまって,,,,」と声をかけられましたが、
いやいや、本心から「とんでもない、とても美味しかったです」と告げて店を出ました。

今回のように時間に余裕のある時に、寛いだ気分で伺うと、満足度のとても高い蕎麦店だと思います。

後から聞いた話、ここは本木のモッくんが「おくりびと」の撮影の時に食べに来たことのある店だそうです。芸能人が来たとか来ないとかの話にあまり興味はないのですが、私も好きな映画だし、この店と映画の雰囲気にも似たところがある気がして、余計に好感をもちました。
彼は鴨蕎麦を食べたのかな?


この後、以前庄内に来た時には時間がなくて、遠目に眺めるだけで引き帰してきた奇勝、十六羅漢岩を見に隣の遊佐町まで脚を伸ばしました。

太古の昔、鳥海山が噴火し海まで流れ出た溶岩に、江戸時代のお坊さんが、海上交通の安全を祈願して彫った石仏なんだそうです、

前回来た時には、罰当たりにも駐車場にある休憩施設、サンセット十六羅漢で石仏も拝まずに、あご出汁ラーメンだけ食べて帰ったのですが、今回はキチンと道中安全を祈願してきました(笑)


まだ時間があったので、もう一箇所、寄り道。
酒田市美術館へ行き、喫茶室「モンマルトル」で珈琲を飲んでからホテルへと戻りました。

思惑とすれば、客も少ないであろう地方の美術館で、静かにまったりと美術観賞したかったのですが、夏休み期間中とあって、家族向けに「シルバニアファミリー」の企画展が開催中。静かどころか「帰りたくない」などと駄々をこねる子供達の泣き声やらで、館内は阿鼻叫喚の渦の中。


まあ、これはこれで活気があってなにより(笑)
地元出身の芸術家による作品が中心の常設展は、静かに観賞できました。

喫茶室の窓からは、晴れていれば芝生の向こうに鳥海山の姿を眺められる・・・・

・・・はずだったのですが、夏雲に隠されてしまって見えませんでした。ざんねん。
ちなみに近所にある、酒田市出身の写真家である土門拳記念館も立派な施設です。
写真好きな方は是非どうぞ。


【本格手打 田毎】
■所在地   山形県酒田市日吉町2-1-14
■営業時間  11:30-14:00  17:30-20:00
■定休日   水曜日 火曜日の夜営業は休み
■最寄駅   JR羽越本線 酒田駅 下車徒歩15分
■駐車場   有り



 

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