2月の末に訪ねたのは、将棋や囲碁のタイトル戦の舞台ともなる神奈川県秦野市内の名旅館、
鶴巻温泉 『元湯陣屋』さん。
鶴巻温泉は、新宿から電車で約60分、小田急小田原線の鶴巻温泉駅が最寄駅となる小温泉郷。
・・・ですが、かつて20軒ほどもあった温泉旅館も、いまは数軒を残すのみとなり、駅には特急ロマンスカーも停まってくれません。
どうせ温泉に行くなら、いっそ箱根湯本まで行った方が面倒がないくらいの位置にありますし、なんとも中途半端でマイナーな温泉地となってしまいました。
しかし、真冬であっても、箱根と違って標高が高くないので、車で行っても急な積雪で立ち往生することもないでしょうし、マイナー温泉地な分、行楽渋滞にはまってゲンナリさせられることもなさそう。単純に温泉と食事を楽しみながら、のんびり過ごすには好適な温泉地だろうとも思います。
その鶴巻温泉の残り少ない旅館の中でも、元湯陣屋は、鎌倉時代の武将、「鎌倉殿の13人」にも登場する和田義盛の陣地跡という、一万坪もの広い敷地をもち、各部屋に温泉浴槽を備えた半離れ状の客室を配置する、別格に高級な温泉旅館。
宿泊代も頭二つくらい飛び抜けていて、隣の旅館の3倍くらいします(驚)
交通費があまりかからないとは言っても、我が家の懐具合では、そう頻繁に泊まれる旅館ではありません。しかしまぁ、○十回目の記念日ですから、奮発して露天風呂付きの客室を予約してあります(喜)
ちなみに和田義盛は、のちに八王子周辺の開拓武士団である「横山党」(=武蔵七党の一つ)とともに、北条氏に討ち滅ぼされてしまうので、多摩エリアと縁がなくもないような。
駅前の細い路地を通り抜け、旅館の駐車場に車を停めると、係の方が待ち構えていてくれました。
ロビー棟は、なだらかな丘の上にあって、車を直に横付けできないのですが、行きも帰りも荷物は運んでもらえるので、その点は安心。
敷地の入口に来ると、この陣太鼓を「ドン・ドン・ドン」と叩いてフロントに到着を知らせるのが、ここのお約束(楽)。
フロント棟は、木々に覆われた敷地内を歩いた、このまだ先。
源泉は敷地内から湧いているようで、通路の脇に飲泉所がありました。
泉質は、カルシウム・ナトリウム塩化物泉。
途中、鯉の泳ぐ池があり、その向こうには夕朝食会場となる豪奢な建物。
これだけ立派な庭園を見ると、こちらもリッチな気分になれます。
階段をいくつか登って、やっとフロント棟。
よく手入れのされた、歩いて楽しい路地です。
階段、高低差、踏石があるので、足の不自由な方には不安がありますが、車椅子用の通路もあるので、事前に宿に確認されれば良ろしいかと。
到着したロビーは、広くはないけど・・・
・・・上品な高級感があります。
お抹茶とお茶菓子をいただきながらチェックイン手続きとなりますが、添えられたこの自家製チョコレートテリーヌが美味しかった(喜)
こちらの陣屋さんの特徴は、温泉浴室付きの客室を配した高級路線であることと、もう一つは、時代に合わせた運営の合理化。
チェックインは、スマホで手続きします。
食事の際のドリンクオーダーや、ルームサービスなども、このスマホアプリでできます。
もちろん、部屋の電話を使ったり、係の方に直接お願いしても良いのですが、IT活用で効率化とサービス向上を目指しているようです。
部屋の鍵も、開け閉めの情報が旅館側に伝えられ、例えば夕食会場でのスムーズな席の案内に役立てたりするとか。
また、従業員の福利厚生も考慮して、客の少ない平日は思い切って休館日を設けてもいます。
高級路線と、効率化って両立させるのは難しそうですが、よく聞く選択と集中ってやつですかね。
実際、バブル崩壊後の経営危機を苦労しながら乗り切り、今に至っています。
庭を眺められる広縁と居間、次の間、寝室、そして露天風呂とシャワーがついた贅沢なお部屋です。
非日常を楽しんでほしいとのことで、テレビは置いてありません。
しかし、風呂上がりに、持ち込んだDVDをのんびり観たかったので、DVDプレイヤーをリクエストして設置してもらいました。
結局、何度も風呂に入ったりしていたら、DVDを見る時間まではなかったのですけどね。
こちらは、広縁から眺める部屋専用の庭。
寝室にはフカフカの布団がすでにセットされているので、もう旅館の方が部屋に来るのは、ルームサービスを頼んだときくらいかな。
風呂上がりに、だらしない格好で寛いでいても、無問題。
櫛は木製で、こんなの初めて見た!
きっと、石鹸なども上質なものを選んでいるのでしょうけど、そちらは知識不足でよくわからない。
ドライヤーは、ダイソンのスタイリッシュなデザインのもの。
風の具合も良いし、これ家用にも欲しいな。
さて、お目当ての部屋付き露天風呂がこちら。
でかい! 贅沢!!
幅2mくらいあるでしょうか(歓喜)
シャワールームは、部屋内にあるので、真冬の夜に体を洗を洗っていても寒くありません。
露天風呂側にも坪庭が設えてあって、素晴らしく優雅な入浴時間を過ごせます(喜)
お湯は無臭のカルシウム・ナトリウム塩化物泉で、口に含むと、弱い塩味と舌にザラっとした感触が残りました。
肌には優しく、強烈さはないけれど、体が温まるお湯。何度も入るには、ちょうど良い泉質かと。
高級旅館だけあって、リネン類も良いものを使っています。
バスタオルは1人2枚づつ、拭き心地の良い国産の今治タオルを使用。
当然のように、バスローブ付き。
作務衣も、サイズ違いで2枚づつ置いてありましたが、風呂上がりにはバスローブの方が具合がよろしい。
使われているものが、いちいち質の高いものなので、気分が上がります。
冷蔵庫周りには、お茶のセット、ミネラルウォーター、温泉水の入った水入れ、湯沸かしボット。
冷蔵庫の中には、お茶の缶、ビール、ジュース各種が入っていて、こちらにあるものは全て無料。
風呂上がりに喉が渇いても、これなら安心。
でも、ジュースを欲張ってこんなに飲んだら、夕食が食べきれなくなるので飲み過ぎ注意。
足りないものがあったら、有料のルームサービスを頼んでも良し。
ルームサービスはなんと24時間対応。
効率化は何処へ行った? 嬉しいぞ(笑)
ルームサービスも、スマホアプリから注文可能です。
将棋のタイトル戦で、棋士が昼食に勝負めしとして注文する、陣屋カレーが有名らしいのですが、そのカレーを注文できるのは、宿泊者用のこのルームサービスのみ。値段は税抜2,500円。
とても興味をそそられるのですが、夕朝食付きのプランを予約しましたから、とてもカレーまで食べる余裕はありません。残念!
お土産もスマホアプリで注文しておくと、チェックアウト時に手渡してくれます。
陣屋まんじゅう、陣屋どら焼き、やまと豚の味噌漬けの三種類があります。
ついつい、全部注文してしまいました(笑)
このように陣屋さんでは、一度部屋に入ってしまえば、風呂はあるし、ルームサービスもあるので、食事の時以外は、全く部屋から出る必要のない、快適で完璧なお籠もり宿となります。
逆に言うと、ホテルのバーとか、土産物売り場とかが館内にないので、ぶらぶら歩き回るような楽しみはありません。
敢えて探すとするなら、外来利用もできる(?)露天風呂と内風呂でしょうか。
部屋にも十分な広さの浴槽があるので、行く必要はないと言えばないのですが、どんなところか見てみたくなったので、露天風呂の方に行ってみることにしました。
備え付けの網かごを持って、館内散歩ですね。
自然地形を生かしたまま、離れの建物を配置しているので、所々に階段があります。
気になる方は、予約の際に、必ず行く食事処に近い部屋を選んで予約すると良いでしょう。
まずは、朝には新聞の朝刊が置いてあるロビーまで戻り・・・
露天風呂へ続く廊下の横に、オーナーが収集した武具が飾られたショーケースがいくつか並んでいます。
上杉謙信が使用した槍とか、真田家の六文銭の家紋の入った鞍とか、宮本武蔵ゆかりの刀とか、結構なビックネームに関連した品々でびっくりするくらい。
へえ〜、スゴイ! よく集めたものです(驚)
まぁ、夜見ると、本物の迫力があって、結構怖いのですけどね(笑)
なんと言っても、ここは「陣屋」ですから。
将棋の対局も「戦さ」と言うことでしょうか。
ここで繰り広げられた、棋士たちのタイトル戦の写真も掲げられています。
一代前の天才棋士になった感のある羽生善治の全盛期の勇姿。
現在のヒーロー、藤井聡太の色紙もあるけど、書はまだ拙いかな。
きっと、これから筆も上達していくのでしょう。
露天風呂への通路は途中から屋外に出て、外階段を上ることになります。暗くなってくると、少々足元が見辛い。
登り切ると、休憩所付きの露天風呂棟。
露天風呂にも、タオルが完備されているので、着替え以外は部屋から持ち出す必要はありません。
常に新しいタオルを使えて、実に快適。
部屋の露天風呂も大きかったけど、流石にこちらの岩風呂の方が大きい。
でも、泉質は同じかな。
小雨混じりの夜だったので、終始貸切状態。
こちらの休憩所にはウォーターサーバーもあるし、ゆっくり長居もできるけど、なんと言っても戻れば部屋に専用露天風呂がついていますから、あくまで気分転換の散歩のようなものですね。
ちなみに、チェックインは15:30からと少し遅めで、チェックアウトは11:00まで。
これだけ完璧なお籠もり旅館なのですから、14:00くらいからのチェックインにしてくれれば、もっと部屋でグダクダ過ごせて嬉しいのですが、その点は残念なところ。せっかく泊るなら、せめて15:30には宿に到着しておきたいですね。
それでは、そろそろ夕食の時間になりました。
次回、食事編です。
鶴巻温泉【元湯 陣屋】
■所在地 神奈川県秦野市鶴巻北2-8-24
■休館日 平日休館日の設定あり 要確認
■最寄駅 小田急電鉄小田原線の鶴巻温泉駅下車 徒歩4分
■駐車場 あり